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霊感商法と宗教や文化の線引き
2014/03/08
弁護士の是枝(これえだ)です
先日、RKBさんから、霊感商法について取材を受けました
取材と受けたと言ってもテレビに映るのは10秒くらいだと思いますが、せっかくなので、取材にあたって作成したメモを公開します
霊感商法と言っても、古典的な霊感商法から、霊視商法(占い商法)、最近ではスピリチュアル商法や開運ブレスレット商法まで、手口は様々ですが、今回は開運ブレスレット商法に焦点を当ててみました
なお、私も、神社やお寺にお参りしますし、宗教や文化を否定するつもりは全くありません
心の平穏や活力をもたらすものとして、宗教や文化は、とても大事なものだと考えています
また、霊感商法として、問題があるのはごく一部で、大半の事業者の方は問題はありません
1 定義・典型例
消費者の悩みに付け込み不安を煽る悪質商法(悪徳商法)の一種
典型例は、販売員が、消費者の自宅を訪問して、「家族に病気や不幸が続くのは先祖の因縁が家系に出ているからだ」等と消費者の不安を煽り、「この印鑑を買えば運勢が開ける」等と消費者に購入を強く勧め、消費者に印鑑等の物品を高額で購入させるというもの
2 主な特徴
販売員が消費者の悩みに付け込み不安を煽るような方法を用いる
3 主な具体例
(古典的な霊感商法)
販売員が、消費者の自宅を訪問して、「家族に病気や不幸が続くのは先祖の因縁が家系に出ているからだ」等と消費者の不安を煽り、「この印鑑を買えば運勢が開ける」等と消費者に購入を強く勧め、消費者に印鑑等の購入代金として数十万円~数百万円を支払わせるというもの
(手かざし商法)
消費者が家族が重い病気にかかっていることで悩んでいたところ、セミナーの会員だという人が、消費者に対し、「手をかざすことで重い病気でも治すことのできる力(パワー)がある」と言い、パワーを取得するセミナーの受講代金として数十万円を支払わせるというもの
(開運ブレスレット商法)
消費者が、雑誌公告を見て開運ブレスレットを購入したが、効果を実感できず、雑誌広告に「万が一効果が無ければこちらまでお電話下さい」と書いてあったので、効果が実感できなかったことを販売会社へ伝えたところ、担当者が、消費者に対し、顔写真を送るように言い、消費者が顔写真を送ると「あなたは悪霊がついている」等と言い、数珠の購入代金や祈祷料・除霊料として数十万円~数百万円を支払わせたりするもの
4 霊感商法と宗教や文化の線引き
裁判所は、販売員が消費者に購入させたことの目的、方法、結果について社会的にみておかしいと言えるかどうか、ということで判断することが多い
★一言で言えば「悩みに付け込み不安を煽るような方法」と言えるか
(問題となることが少ないと思われる例)
・あくまでファッションアイテムやお守りとして販売しているだけ
・悩みや不安など個人的なことや立ち入ったことを詳しく聞かない
・購入をしつこく勧めない
・購入した後に連絡させたり連絡したりしない
・支払金額が明確で通常の金銭感覚の範囲内である(数千円~数万円)
・後日追加の代金や料金を請求しない
(問題があると思われる例)
・具体的な結果が得られると期待させるようなことを告げる
(科学的・医学的な根拠もないのに、「西洋医学では治らない難病でも必ず治る」等と告げて、具体的な結果が得られると期待させる)
・本人や家族の病気や不幸、結婚や恋愛、人間関係や仕事に関する悩みや不安など、個人的なことや立ち入ったことをしつこく聞く
・先祖の因縁だとか悪霊の祟りだとか、不幸の原因として消費者がどうしようもないことを告げて、不安を煽る
・購入した後も何かと理由をつけて連絡して追加購入をしつこく勧める
・支払金額が通常の金銭感覚からかけ離れた額である(数十万円以上)
・お金がないと言うとお金を借りてでも払うように求める
・具体的な効果がないと言うと、消費者のせいにされたり追加購入を勧められたりする
・具体的な効果がないと言うと、なぜか他人を勧誘するように勧める
・返金を求めると、「返金すれば不幸がおとずれる」等と脅す
5 主な予防法
・大手の新聞や雑誌等に掲載されている広告であっても、取引内容に問題ものもあるので、大手の新聞や雑誌の広告だからと言って信用しない
・「スピリチュアル」「霊的」「精神世界」等よく分からないけどもっともらしく聞こえる言葉に過度に期待しない
・誰もが多少なりとも悩みや不安を抱えていて他人に付け込まれることがあることを自覚し、お金を払ったからと言って幸運になるということではないことを理解する
・すぐに契約せず、自分がどんなものに対してなぜお金を払おうとしているのか十分に検討したうえで、不要ならきっぱりと断る
・無料や格安の悩み相談・人生相談は、実際は追加の代金や料金の支払を請求されることもあるので、特に注意する
・一見宗教に関係のなさそうな団体(NPO法人やボランティアサークル等)を装っていても、実際は宗教を勧誘される場合もあるので、注意する
★放送では「『高いお金を払えば何とかなる』という気持ちで購入するのは危ないのでは」という話もあったようです
6 対処法
・一人で悩まずに早めに消費生活センターや弁護士会に相談に行く
・クーリング・オフ等により返金を求めることができる場合がある
開運ブレスレットや数珠の購入をきっかけに、“除霊のため”“運気を上昇させるため”と、次々に開運商品を売りつける手口に要注意!(発表情報)_国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120202_1.html
平成26年 3月 8日
文責 弁護士 是枝秀幸(これえだ・ひでゆき)