2021/03/29

「宗教がかっている」と言われ…帯津医師が自分の「信仰心」を明かす (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

「宗教がかっている」と言われ…帯津医師が自分の「信仰心」を明かす (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

「宗教がかっている」と言われ…帯津医師が自分の「信仰心」を明かす

連載「ナイス・エイジングのすすめ」

帯津良一週刊朝日#帯津良一
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

折口信夫博士 (c)朝日新聞社

折口信夫博士 (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「私の信仰心」。

【折口信夫さんの写真はこちら】

*  *  *
【古代人】ポイント
(1)「帯津先生は宗教がかっている」と言われることが
(2)私は宇宙の真理を翻訳者なしで読んでいる
(3)私の信仰心は古代人のレベルなのかもしれない

 以前にも書きましたが、私は宗教にあまり関心がありません。ところが一方で、「霊性」とか「あの世」とかについてよく語るので「帯津先生は宗教がかっているのではないか」と言われてしまうことがあります。

 駿台予備学校で医学部志望の学生を前に講演したときにも、そういうことがありました。真面目そうな学生さんが質問に立ち上がり、「先生の言っていることは、宗教ではありませんか」と問いただしたのです。私は一瞬たじろぎましたが、とっさにこう答えました。

「いえ、私は宇宙の真理を解き明かそうとしているだけで、それは宗教ではありません。宇宙の真理を上手に翻訳した天才の思考や行動に感動し、共鳴した人々が集まって教団をつくるのが宗教です。つまり宗教の教祖は名翻訳者です。私は翻訳者になろうとは思わないし、翻訳者に対する興味もありません。私は宇宙の真理を原書で読んで、それを私が求める医療につなげたいと思っているだけなのです」。学生さんたちの前で、ずいぶん偉そうなことを言ってしまったものです。

 こういう私も信仰心といったものがないわけではありません。毎朝、観音さまを拝んで、大きな声で「延命十句観音経」を唱えています。

 私の生家は浄土宗のお寺の門前にありました。ですからお寺の境内が遊び場だったのです。そして毎月8日の縁日には、身を正してご本尊さまを拝みました。4月8日の灌仏会(かんぶつえ)には庫裏に安置された釈尊像に甘茶を注ぎました。こうしたことを思い出すと当時の敬虔(けいけん)な気持ちが蘇(よみがえ)ってきます。しかし、その信仰心とは神仏に対する畏怖(いふ)の念ではなかったと思います。




広辞苑には「信仰」について「宗教活動の意識的側面をいい、神聖なもの(絶対者・神をも含む)に対する畏怖からよりは、親和の情から生ずると考えられ」とあります。まさに私の信仰心も親和の情なのです。それは実は、相手が仏陀(ぶっだ)であろうとイエス・キリストであろうと変わりません。

 民俗学者で国文学者の折口信夫博士は、日本に仏教やキリスト教が伝来する前の「古代人」の心を探ろうとした人です。その折口博士の考え方を解説した本で次のような記述を見つけました。

「人間の知覚も思想も想像も及ばない、徹底的に異質な領域が『ある』ことを、『古代人』は知っていた。(中略)すでに死者となった者やこれから生まれてくる生命の住処(すみか)である『あの世』または『他界』もまた、世界を構成する重要な半分であることを、『古代人』たちは信じて疑わなかったのである」(『古代から来た未来人 折口信夫』中沢新一著、ちくまプリマー新書)

 これは私の虚空に対する思いと同じです。私の信仰心は古代人のレベルなのかもしれません。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

※週刊朝日  2020年12月4日号

 
1
2
トップにもどる 週刊朝日記事一覧

帯津良一
帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

貝原益軒 養生訓 「健脳」養生法――死ぬまでボケない ナイス・エイジングのすすめ