自然体験がスピリチュアリティの醸成に及ぼす影響
竒二 正彦 NPO法人生態教育センター/立教大学コミュニティ福祉学研究科*
嘉瀬 貴祥 立教大学現代心理学部
濁川 孝志 立教大学コミュニティ福祉学部
Effects of Nature Experience on the Formation of Human Spirituality
KIJI Masahiko
KASE Takayoshi
NIGORIKAWA Takashi
トランスパーソナル心理学/精神医学
原著論文 Vol.17, No.1, Mar, 2018, p.68-p.83
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Ⅰ. 問題
第1節 現代日本が抱える心にまつわる諸
問題と求められるスピリチュアリ
ティの醸成
我が国は第二次世界大戦の敗戦から、戦後し
ばらくは極端な食料難、物不足の時代を余儀な
くされた。しかし、高度経済成長期とともに復
興、発展をとげ、1965年の経済白書では「もは
や戦後ではない」と謳うほど豊かとなった。豊
かさを測る指標としてよく使われる、国内総生
産(Gross domestic product; 以下, GDPと略記)
で日本を見ると現在も第3位を維持し(総務省
統計局、2016)、治安に関しても、世界平和度
指数(Global peace index)において日本は162
カ国中第8位と、非常に安全な国であることが
わかる(Institute for Economics and Peace、2015)。
また平均寿命を見ても、男女を合わせると
日 本 は 世 界1位 に あ り、WHO(World Health
Organization, 2016 ; 以下, WHOと略記)は、日
本は総合的に見て世界で最も医療保険制度が
整っている国と報告している(安田, 2001;
WHO, 2016)。このように高度経済成長を果た
し、なおかつ安定成長を続けて来たことで、日
本国民は物的欠乏から解放され、様々な豊かさ
を獲得した。
しかし一方で日本社会には、自殺、いじめ、
引きこもり、うつ病の増加、高齢者の孤独死な
ど解決の糸口が見いだせない様々な社会問題が
ある。これらの社会現象は、これまで我々が歩
んできた日常的な衣食住・蓄財に関わる欲望の
充足などの物質的な価値観ばかりが注目された
結果として起きているという指摘がある(PIL
研究会, 1993)。生活水準は向上し物質的欲求
は満たされつつある一方で、生きがい感や生き
る意味の喪失という新たな問題が浮上してきた
というのである。Kessler(2000)は、これらの
社会問題は、スピリチュアルな価値観が失われ
たことと無関係ではないと指摘する。特に現代
の若者においては、教育の中からスピリチュア
リティに関わる教材が意図的に排除された状態
にあるため、上記のような破壊的な行動を招く
温床になりやすいという。また大石・安川・濁
川(2008)も、こうした心の問題の多くはスピ
リチュアルな価値観の喪失と関係があると指摘
*〒352-8558 埼玉県新座市北野1-2-26 立教大学
コミュニティ福祉学部 濁川研究室内 竒二正彦
自然体験がスピリチュアリティの醸成に及ぼす影響(竒二・嘉瀬・濁川)
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している。
更に、現代人の生活水準は向上し物質的欲求
は満たされつつある一方で、生きる意味や人生
の目的の喪失という問題が起こってきたという
指摘がある(佐藤, 1993)。ナチス・ドイツに
よる収容所での壮絶な体験を「夜と霧」に綴
り、ロゴセラピーを創始したオーストリアの精
神科医・心理学者のヴィクトール・フランクル
(2002)は、収容所における人権を無視した極
限の状況において、人間の生命力を支えたもの
は、「生きる意味」や「意味への意志」を持つ
か持たないかであったと説いた。林(2011)
は、現代的な文脈で考えた時、「生きる意味」
と「意味への意志」は「スピリチュアルな要
求」に置き換えることができると指摘する。
生きる意味や目的意識が、人の健康と大きく
関係しているという指摘は、医療における
QOL(Quality of Life:生活(いのち)の質)
の議論にも見られる。藤井(2000)は、ガン患
者のQOLは、従来の要素として挙げられてき
た身体的、心理的、社会的領域だけでなく、ス
ピリチュアルな領域からも捉えた方が良いとい
う。実際、ガン患者の健康に関する調査では、
QOLの要素の一つである身体的領域のケアが
患者に与える影響より、スピリチュアルな領域
に対するケアの方が、患者の全体的QOLに与
える影響がはるかに大きかったという。
このように、「現代人の心や行動」に関わる
社会問題の解決の一つとして、スピリチュアリ
ティの醸成は重要なテーマであると思われる。
第2節 スピリチュアリティの定義
では、スピリチュアリティとはなんであろう
か。スピリチュアリティの意味や定義に関して
は、これまで多くの研究者によって議論されて
きた。しかし、これまでに統一された見解が得
られたとは言い難い。それらの諸説は、定義す
る研究者の背景、つまりは国籍、文化的背景、
歴史的背景、学問的背景など様々な要因の影響
を受け、それぞれ異なるものになっている(濁
川、2009)。
しかし、多くの文献(上田, 2014; 弓山, 2010;
竹内, 2012; 伊田, 2004; 窪寺, 2004, 2008; 西平,
2007; 濁川・遠藤・満石, 2012)が、世界保健
機関(WHO)が1998年に行われた執行理事会
に お い て、 健 康 の 定 義 に ス ピ リ チ ュ ア ル
spiritualという言葉を入れる提案をしたことを
取り上げている。以下に提案された定義を記
す。
Health is a dynamic state of complete physical,
mental, spiritual and social well being and not
merely the absence of disease or infirmity.
(健康とは、完全な身体的、心理的、スピ
リチュアル及び社会的福祉のダイナミック
な状態であり、単に疾病又は病弱の存在し
ないことではない。)
また、梶原(2014)によれば、スピリチュア
リティの語源は、スピリトゥス(spiritus)とい
うラテン語に由来する。このラテン語は、スピ
ロー(spiro)という「呼吸する」「生きている」
「霊感を得る」「風が吹く」などの意味を持つ動
詞に基づき、「呼吸や息」「いのち」「意識」「霊
感」「風」「香り」そして「霊」や「魂」を意味
する。また、スピリトゥス(spiritus)というラ
テン語は、歴史の中でキリスト教の影響を受け
ており、その影響は旧約聖書の創世記にさかの
ぼることができる。
さらに、神学者である窪寺(2004)は、「ス
ピリチュアリティとは、人生の危機に直面して
『人間らしく』『自分らしく』生きるための『存
在の枠組み』『自己同一性』が失われたときに、
それらのものを自分の外の超越的なものに求め
たり、あるいは自分の内面の究極的なものに求
める機能である。」と定義する。つまり、スピ
日本トランスパーソナル心理学 / 精神医学会誌「トランスパーソナル心理学 / 精神医学」Vol.17, No.1, 2018 年
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リチュアリティとは、精神的危機を乗り越える
ために、人間が生得的に持っている「機能」で
あるという。
近年欧米では、「自分は既成宗教には属さな
いが、スピリチュアルなものは大切にしている
(I'm not religious but spiritual. )」という言葉が
よ く 聞 か れ る と い う( 大 柴, 2014)。 大 柴
(2014)は、こうした動きを、「『既成宗教』が
『組織の維持・管理』に力を注いでいるうちに、
人々はこの世の直中でしっかりと目を凝らして
冷静に現実を見極め、自らを生かし、自らの
『魂』を活性化させる『真のスピリチュアリ
ティ(霊性)』を求めているように私には思わ
れるのである。」と述べている。このように、
スピリチュアリティとは心の健康や安寧に大き
く関わる概念であると思われる。
第3節 スピリチュアリティと自然との関
わり
スピリチュアリティという概念に関する先行
研究をみると、自然という言葉と関わっている
ことが見て取れる。
医師である今西(2008)によると、スピリ
チュアリティには一般には大きく二つの側面が
あるという。1つは「自己存在の意識」、もう1
つは「自己を超越したものの存在の意識」であ
る。前者は生きていることの意味、生きる力、
幸福感などと結びつくものであり、後者はいく
ぶん宗教的な要素を含み、自己を取り巻く自然
や絶対的存在としての神などを意識し、自然に
対する畏敬や自然との共生などに関連している
という。
和・廣野・遠藤・満石・濁川(2014)は、こ
れまでに我が国で開発された代表的なスピリ
チュアリティ測定尺度から、スピリチュアリ
ティの構成概念を整理した。その結果、日本人
が持つスピリチュアリティの概念構造として、
【他者とのつながり】、【自然との一体感】、【畏
敬の念】、【死を超えた希望】、【安心】、【物質主
義からの解放】、【自律】という7項目が抽出さ
れた。この研究の結果から、若者や中高年者に
共通する日本人が持つスピリチュアリティと
は、『人間が、幸福な生(価値ある人生)を全
うするために不可欠なものであり、【他者との
つながり】、【自然との一体感】、【畏敬の念】、
【死を超えた希望】、【安心】、【物質主義からの
解放】、【自律】に重きを置く価値観』という新
たな定義を見出した。
伊田(2004)は、スピリチュアリティやスピ
リチュアルケアについての様々な論者の見解を
取り上げ、そこで取り上げられているスピリ
チュアリティの概念には様々な類似性があると
報告している。その類似性の一つを「つながり
の中の私」と呼び、「私」は自己(たましい、
内なる自己)、他者、超越者、そして自然との
相互作用を伴ったつながりであると捉えるもの
で、言い換えれば、全体の中の一部としての自
己存在に気づく視点である、と説く。
中谷・島田・大東(2013)は、スピリチュア
リティの概念構造に関する研究において、キー
ワードを「スピリチュアリティ」「スピリチュ
アル」「覚醒」「危機」「クライシス」「概念」
「グリーフ」「悲嘆」「日本人」と設定して488件
の文献を抽出し、そこから「スピリチュアリ
ティの覚醒」というキーワードでさらに13件の
論文を抽出した。そして、このデータを分析し
た結果、「地球・自然・人とのつながりを感じ
る」という概念が挙げられた。その内容は、
「地球と自分とのつながりを感じる」、「自然と
私が一つになったような何とも表現できない状
態」、「全てが私とひとつになっているようなア
ウェアネスを感じる」、「自己と環境が統一体で
あるという感覚(自然との一体感)」、「死をも
超えた他者との関係(新しい存在と意味の回
復)」、「自分を超越する存在や力との関係にお
いて自己や周囲の人・環境について理解する」
自然体験がスピリチュアリティの醸成に及ぼす影響(竒二・嘉瀬・濁川)
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であった。
このように、多くの研究者がスピリチュアリ
ティの概念に「自然」が含まれていることを挙
げている。これらのことを考えると、スピリ
チュアリティと自然とは密接な関連性があるも
のと思われる。
第4節 スピリチュアリティの醸成と自然
体験に関する先行研究
自然体験とスピリチュアリティに関する先行
研 究 を み る と、McDonald, Wearing, & Ponting
(2009)は、オーストラリアのビクトリア国立
公園において、公園の利用者が荒野においてど
のような至高体験をするのかを調べている。研
究方法は、国立公園に訪れた人に、滞在中にど
のような至高体験があり、その経験の意味や、
至高体験が起こった風景の説明などを自由記述
させたものであった。その結果、核となる以下
7つのテーマがみられた。①審美的な質、②距
離をとる(人間社会の圧力などから逃避する)、
③意味のある経験、④ピーク時の経験数(言及
された最高の経験は、荒野の中で経験された数
多くの肯定的で深遠な瞬間のほんの1つだっ
た)、⑤ワンネスとのつながり、⑥限界の克服
(溢れるエネルギー)、⑦意識の高まり(至高体
験の間または直後に、自分と世界と人生に関し
て深く理解することができた)。
Heintzman(2009)は、自然の中で実施する
レクリエーションと、スピリチュアリティとの
複雑な関係を説明する、経験的研究と理論モデ
ルについて検討しており、自然体験や被験者
の、様々な条件や構成要素が、スピリチュアル
な経験や幸福などにつながる可能性があること
を示唆している。
Piff, Dietze, Feinberg, Stancato, & Keltner
(2015)は、自然体験と畏敬の念との関係につ
いて検討している。その研究は、ユーカリの高
木が林立するキャンパスで実施された。被験者
を、1分間ユーカリの森を注視する群と、高い
建物を眺める群に分け、この瞬間的な経験が宗
教的援助行動のレベルに及ぼす影響を比較して
いる。その結果、森を注視する群と高い建物を
眺める群と比較して、森を注視する群に起こる
自然主義的な畏敬の念が、より宗教的援助行動
を強化し、自己に対する意識の高さを減少させ
たという。
今西(2008)は、スピリチュアリティを高め
る前段階でリラクゼーション誘導を行うことが
有効であるといい、森林セラピーに注目する。
森林セラピー(森林浴、森林療法)とは、森林
という自然環境を利用した統合医療の一つであ
るが、リラクゼーションのためには、森林内に
ある森林揮発性物質(フィトンチッド)や緑の
癒し効果、自然(小川、風)の音などによる効
果が有効であるという。そして、森林セラピー
によって得られる効果として、今西はスピリ
チュアリティの向上を挙げている。
また、中右・今西(2009)は、緑の療法的効
果(Ulrich, 1984)や、森林環境での免疫機能
の 向 上( 大 平・ 高 木・ 増 井・ 大 石・ 小 幡,
1999)、 ス ト レ ス の 軽 減(Hansmann, Hug, &
Seeland, 2007)が示された先行研究に注目し、
緑豊かな環境は人にとって生理学的、心理学的
に療法に適した環境であると考えられるとい
う。さらに、中右・今西は日本人のスピリチュ
アリティ観の共通項として、自然との対比にお
ける人の小ささや、自然への畏敬の念が挙げら
れること(田崎・松田・中根, 2001)、日本人
高齢者のスピリチュアリティの構成概念とし
て、「自然との融和」が挙げられること(竹
田・太湯, 2006)から、緑に触れることによ
り、スピリチュアリティの向上が期待できると
している。そして実際に、次世代型統合医療の
実践の場として、大阪府吹田市にある万博記念
公園を選んでいる。中右らによると、万博記念
公園を選んだ理由は、全面的に緑化された260
日本トランスパーソナル心理学 / 精神医学会誌「トランスパーソナル心理学 / 精神医学」Vol.17, No.1, 2018 年
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ヘクタールの広大な敷地に森林や芝生など、多
様な緑地が整備されていること、また、多目的
ホールを併設した自然観察学習館などの屋内施
設がある点も、各種のプログラムを行うのに適
していたという。その結果、参加者の血液検査
からは、免疫力の向上が確認され、また参加者
の心理質問紙調査からは、QOLの向上が推察
された。さらに参加者からの感想からは、スピ
リチュアリティの向上の可能性が示唆されてい
る。
濁川ら(2012)は、スピリチュアルな内容を
テーマにした講義を、緑豊かな場所で行なった
場合と、都市環境下にある大学のキャンパスで
行なった場合では、受講者のスピリチュアリ
ティへの影響に関して、どのような違いがある
か検討を試みた。その結果、自然環境下と都市
環境下にある大学のキャンパスで同じ授業を実
施したにもかかわらず、自然環境下で行なった
授業の受講者の方が、スピリチュアリティの涵
養がより促進されることを示した。
ここまで議論してきたように、現代日本に山
積する、心に関わる社会問題を解決するために
は、スピリチュアリティの醸成が貢献する可能
性がある。そして、スピリチュアリティの概念
の中には自然という言葉が多く見られ、様々な
先行研究からもスピリチュアリティの醸成に関
わる一要因として、自然体験の存在が示唆され
ている。
Ⅱ.目的
本研究の目的は、自然体験がスピリチュアリ
ティの醸成と関係するかどうかを検討するもの
である。しかし、先行研究では、それぞれの研
究者が自然体験の意味を設定しており、自然体
験の定義が明確ではない。環境教育辞典(日本
環境教育学会, 2013)には、『自然体験活動の
定義としては、1996年、文部省(当時)の研究
会が「青少年の野外教育の充実について(報
告)」の中で示した「自然の中で、自然を活用
して行われる各種活動であり、具体的には、
キャンプ、ハイキング、スキー、カヌーといっ
た野外活動、動植物や星の観察といった自然・
環境学習活動、自然物を使った工作や自然の中
での音楽会といった文化・芸術活動などを含ん
だ総合的な活動」という定義が広く知られてい
る。』とある。そこで、本研究においては、環
境教育辞典の自然体験活動の定義を参考に、4
泊5日の自然体験型合宿の中で、キャンプ、ハ
イキング、カヌーといった野外活動と、動植物
や星空の観察といった自然・環境学習活動等を
実施することとした。また、先行研究におい
て、自然体験の前後でどのような心理的な変化
が起こったのか、定量的な検討をしたものが少
な い。Heintzman(2009) に よ れ ば、 ス ピ リ
チュアリティと自然に基づいたレクリエーショ
ンの関係に関する研究の大部分は定性的である
ため、定性的な知見がより大きな集団に一般化
できるかどうかを判断するには、より定量的な
研究が必要であるという。そこで、本研究の研
究1において、スピリチュアリティの様々な構
成要素の中のどの側面が醸成されるのかを定量
的に検討することとした。Piff et al. (2015)、田
崎・松田・中根(2001)、竹田・太湯(2006)
などの研究を参考に、スピリチュアリティの構
成因子と思われる「自然との融和や一体感」
「畏敬や畏怖の念」「生きがい感」が自然体験に
よって醸成されるのではないかという仮説を立
てた。そして、それらの概念を含む尺度とし
て、日本人の青年層のスピリチュアリティを測
定する尺度Japanese Youth Spirituality Rating Scale
(JYS:濁川・満石・遠藤・廣野・和, 2016)を
使用した。すなわち、JYSで抽出された5つの
因子、①「自然との調和」、②「生きがい」、③
「見えない存在への畏怖」、④「先祖・ルーツと
の繋がり」、⑤「自律」が、短期間の自然体験
自然体験がスピリチュアリティの醸成に及ぼす影響(竒二・嘉瀬・濁川)
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の前後で、どのように変化するのかを検討する
ことを目的とした。加えて、スピリチュアリ
ティに関連すると思われる「生きがい感」「精
神的健康度」についても同様の検討をすること
を目的とした。
また、自然体験によってスピリチュアリティ
が醸成されやすい人と、そうでない人に、どの
ような違いがあるのかを検討した先行研究はあ
まり見られない。梅原(1989)によれば、かつ
て我々の祖先は、自然の中で生きとし生けるも
のと共存したことで、太陽に生命の再生を見、
動植物や無機物にまで人間と同じ霊の存在を認
めるというアニミズム思想を持っていた。ま
た、上田(2014)によると、現代日本における
スピリチュアリティの基層には、自然に対する
日本人の霊性観が存在し、自然界の見えない力
の威光は古代アニミズム信仰から現代に至るま
で受け継がれているという。そして、第3節で
取り上げた、和ら(2014)の研究における、日
本人のスピリチュアリティの概念の構成要素
「自然との一体感」の中には、「自然に対する感
受性」という概念が含まれている。これら3つ
の先行研究を踏まえて考えた時、自然体験の蓄
積や、自然に対する感受性、さらにスピリチュ
アリティの醸成の間には、何らかの関係が存在
する可能性がある。藤後・磯・坪井(2014)に
よれば、自然への感受性は、短時間で形成され
るものではなく、幼少期の経験量や経験の質に
由来する能力であるという。つまり、過去の自
然体験が多い者ほど、現在のスピリチュアリ
ティ傾向が高い可能性があることから、研究2
において、その検証を試みることを目的とし
た。