2021/04/11

日本、中国、韓国がCO2「ネットゼロ宣言」温暖化対策への影響は? - 国際環境NGOグリーンピース

日本、中国、韓国がCO2「ネットゼロ宣言」温暖化対策への影響は? - 国際環境NGOグリーンピース


日本、中国、韓国がCO2「ネットゼロ宣言」温暖化対策への影響は?
グリーンピース・ジャパン 2020-12-16
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2020年は世界中が新型コロナウイルスの感染拡大によって揺らいだ1年になりましたが、歓迎すべき出来事もありました。

中国に続いて、日本、韓国が相次いで温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ネットゼロ宣言」を発表しました。長年にわたる各国の政府に対する働きかけの結果、アジアの経済大国3カ国が、正式に温室効果化ガスを2060年(中国)または2050年(日本、韓国)までに実質ゼロにする声明を出したのです。

しかし、そもそも「ネットゼロ」とはなんでしょうか?これからどうなるのでしょうか?そんな疑問をについて、解説していきたいと思います。
ネットゼロ?実質ゼロ?それともカーボンニュートラル?

「ネットゼロ」「温室効果化ガス実質ゼロ」「カーボンニュートラル」など、いろいろな言い方がありますが、これらはすべて、最終的にCO2の排出量をゼロにすることを意味します。

その実現方法は、基本的に2つあります。

1つは、CO2の吸収力を高めること。もう1つは、CO2の排出量を減らすことです。

例えば、植林をたくさんすると、森林によって吸収されるCO2の量を増やすことができます。また、海を保護して健全な海洋生態系を守ることも、CO2を海の中に留めておくことにつながります。しかし、もっと有効な手段は、大量のCO2を排出する化石燃料を自然エネルギーへ切り替えたり、大規模な省エネ対策を導入したりすることによって、排出量自体を削減することです。

これは発電だけではなく、日常生活や交通、セメントや木材を利用する建設工事など、あらゆる場面において実施することが必要です。

世界中の国や自治体がネットゼロ宣言

専門家によると、カーボンニュートラルは気候変動の破壊的な影響を防ぐ最も有効な手段で、産業革命以後の世界の平均気温上昇を1.5度未満に抑えるためには、2050年までにカーボンニュートラルを達成しなければなりません。

ネットゼロ宣言を出している国や自治体はますます増えており、ネットゼロの実現が法律で定められている国もあります。

EUやカナダ、南アフリカは2050年までにネットゼロを宣言しています。また、オーストリアとアイスランドは2040年まで、フィンランドは2035年までというように、もっと早い目標を設定している国もあります。

CO2排出大国の日本、中国、韓国の3カ国は、CO2排出の「G3」と言われます。日中韓3カ国だけで、2018年の世界全体のCO2炭素排出量の3分の1を占めています。それだけに、今回の3カ国の宣言には、とても重要な意味があります。

この3カ国の動きが、アジアのほかの国の行動を後押しすることも期待できます。
どうやってネットゼロを実現するか?それが重要

これらの目標や宣言を達成するに当たって鍵となるのは、長期にわたる具体的な行動計画です。

各業界や分野で、段階的な脱炭素をどのように実現できるかを明記するロードマップは欠かせません。

化石燃料から100%自然エネルギーへ切り替えるだけでなく、海外への石炭火力発電事業への融資を止めること、公的金融機関による海外貿易や投資は国内事業と同じ基準で行うことなど、考慮すべき点は様々です。

日本の場合、特に目指すべきなのは、電力市場への参入のハードルを下げることや、2030年までに電源構成の50%を自然エネルギーでまかなうことです。

ネットゼロ宣言は歓迎すべき重要な一歩ですが、この宣言に伴う政策や脱炭素に向けた具体的な行動は、宣言そのものより重要です。
35機のタービンが、3万5,000世帯分の電力を発電する福島県の風力発電所(2016年撮影)
グリーンピースが果たしてきた役割

もちろん今回の歴史的な宣言は歓迎すべきですが、中身のない宣言にならないように本格的な行動は不可欠です。そのために、日本、中国、韓国で活動しているグリーンピースも、次の行動を考えています。

今年、3カ国が激しい豪雨や洪水に見舞われるなか、グリーンピースは一刻も早いカーボンニュートラルの実現に向けて、それぞれの政府に働きかけてきました。3カ国のネットゼロ宣言は、グリーンピースと各地で一緒に活動するサポーターの皆さんの行動の成果といえます。
みずほフィナンシャルグループの株主総会に、株主として参加したグリーンピース・ジャパンのスタッフ。気候変動を加速させる石炭ではなく、未来を守る自然エネルギーへの投資を加速させることを求めた(2019年6月)

日本では、脱石炭を目指して活動しています。今年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、日本政府と日本の主要な金融機関に対して石炭事業への資金提供をやめるよう訴えました。こうした取り組みの結果、昨年の三菱UFJに続き、みずほ、三井住友が新規石炭事業に基本的に融資しない方針を発表し、3メガバンクがそろって、脱石炭への第一歩を踏み出しました。

しかし、例外規定も多く設けられているのも事実です。除外されている事業が未だに多い現状を踏まえて、グリーンピースは9月、特定の石炭プロジェクトに融資していなくても、石炭事業会社への資金提供などによって、日本のメガバンクと石炭市場が緊密につながっていることを分析する報告書を、パートナー団体と一緒に発表しました。

今年発足した菅政権に対しては、来年の春に公表される予定の第6次エネルギー基本計画に向けて、持続可能で公平なカーボンニュートラルを実現するように働きかけています。

北京では、グリーンピースは10年間以上、気候変動とエネルギー問題についての取り組みを続けています。中国で活発な活動を行う数少ないNGOの一つです。

成功例の一つはグリーンボンド(環境活動の資金調達のため発行されている債券)の定義基準から石炭関連事業のすべての項目が撤去されたことです。大気汚染の調査やニュースレターをはじめ、ヒマラヤ山脈の氷河融解や、2020年に中国南部で発生した気候変動が原因と考え得る豪雨や洪水など、多岐にわたる分析によって、環境分野で信頼の置ける情報源と見られるように成長しました。
ヒマラヤ山脈で、エベレストの南に連なる、世界で4番目に高い山・ローツェに登頂し、気候変動の影響を記録した(2019年8月)

韓国では、重要な政治家と直接対話したり、2050年のカーボンニュートラルを含めた政策提言書を出したりする一方、人気ユーチューバーとコラボレーションするなど、クリエイティブ性の高いキャンペーンを展開し、若い世代を巻き込んで活動してきました。
連日の猛暑が続く韓国で、ランドマークが溶けたアートインスタレーションを展示し、気候変動の危機を訴えた(2020年8月)
ネットゼロ「宣言」で終わりにしない

キャンペーンは確かに前進することができましたが、ここで終わりではありません。

グリーンピースは今年の努力に踏まえてさらにクリエイティビティを生かして取り組み、東アジアはもちろん、世界の人々と一緒に、気候危機を回避する行動を強く求めて、活動していきます。

すべての人が気候危機に脅かされることなく、公平な世界で暮らせるように、グリーンジョブと言われる環境への負担が少ない仕事や、食糧が公平に行き渡るシステムづくり、きれいな空気を守るための投資は不可欠です。これはグリーンピースだけの動きではなく、すべての人たちが参加できる運動です。

自然エネルギー100%、脱炭素へのロードマップを政府が受け入れるように署名活動で声を届けたり、石炭事業への投資の抜け穴をなくすようメガバンクに呼びかけるなど、日本のみなさんの力が必要な場面もたくさんあります。

ネットゼロ宣言が、単なる「宣言」で終わらず、気候変動の危機から私たちの暮らしを守るために実現されることを目指して、一緒に行動していきましょう。

ネットゼロ宣言が、単なる「宣言」で終わらず、気候変動の危機から私たちの暮らしを守るために実現されることを目指して、一緒に行動していきましょう。