



4+私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム
by エミリー・ナゴスキー (Author), & 2 more Format: Tankobon Softcover
3.5 3.5 out of 5 stars (2)
ニューヨークタイムズ・ベストセラー!
米国で50万部、世界28カ国で翻訳、
米Amazonで10年近くにわたって複数ジャンル1位!
私たちが大人になっても知らないままだった、「女性の体・性・快楽のメカニズム」を、
米国の人気性教育者が最新科学をもとにやさしくひもとく。
世界中の女性たちが読んだエンパワーメントの書、待望の初邦訳。
■日本語版監修:高尾美穂(産婦人科医)
大人の女性は、自分の体や性、セックスのことをどれくらい「ちゃんと」わかっているのだろう?
性にまつわる情報は溢れているが、その多くは男性主体の文化で発信されてきたもので、科学的根拠にも乏しい。女性が性についてオープンに語ることはいまだ難しく、何がほんとうに正しいのかは、大人になってもわからないままだ。
著者エミリー・ナゴスキーは、TEDトークの再生回数数百万回、Netflixのオリジナル・ドキュメンタリー・シリーズ「快楽の原則」への出演などで知られる米国の人気性教育者。「女性の体・性・快楽についての正しい知識を女性の手に取り戻そう」と呼びかけ、あらゆる疑問やモヤモヤをやさしく、わかりやすく解きほぐす。その根拠となるのは科学だ。
本書は、これまでオープンに語られてこなかった、女性の体と性にまつわる科学的な事実を、研究結果や事例を用いて詳らかにする。なんとなく信じてきた、あれもこれも嘘だったことがわかり、目から鱗は必至だ。
そして、自分の体について正しい知識を持つことは、決して性だけの話にとどまらず、女性の尊厳やアイデンティティーに関わる「自分ごと」の問題なのだということに気づくだろう。その知識は、すべての女性ひとりひとりの自信や力につながり、ありのままの自分を愛するための豊かな土壌になるはずだ。私たちのほんとうの「セクシュアル・ウェルネス」(性の健康)は、そこからはじまる。
◆海外での賛辞
性の科学がついに解読され、解明された! 誰もが女性の体と性について正しい知識を持ちたいと思っていたはず。その願いは、このエンパワーリングでセックス・ポジティブな本によって叶えられた。
――リファイナリー29
エミリー・ナゴスキーが、科学と性的自己啓発のジャンルをやわらかい言葉で癒合させた稀有な業績は称賛に値する。本書は、性欲や快楽の科学についての厳然たる事実を、親しみやすくわかりやすい方法で提供している。
――ザ・ガーディアン
女性(とそのパートナー)に何が起こっているのかを説明するための、新しい「言葉」をくれる本。
――ハフィントンポスト
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528 pages



Product description
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From Japan
親カッパ
5.0 out of 5 stars 自分の中のアクセルとブレーキを文脈を使ってより良いものにしてゆく 流石にページ数が多く要約版が欲しい
Reviewed in Japan on December 8, 2024
Format: Tankobon Softcover
女性の性について 研究家が解説した本
この手の本は、単なる愛好家が想いだけで書いたもの
と、研究家が書いたもので、研究結果が書いてあるのでわかりずらい
の2通りなのですが、頑張って前半よりに書いたもののやはり研究家
わかりづらさがあります。
女性の性について研究した内容をまとめたもの
内容は
まず共通認識として理解すべき
基礎知識
2重支配モデル(アクセルとブレーキ)
「文脈」について記載しています。
その上で、この本で述べる
性に大きな影響を受ける「文脈」について説明しています。
3部では 性的興奮が実は2つの側面があること
最後にすごく気持ちいいを記載しています。
確かに、「アクセル」がなかなか押せないタイプや、「ブレーキ」かかっているなぁと
思うことがあり、わかっているとどのような「文脈」を考えれば良いのかというのが
わかるのと、確かにアクセルとブレーキにより主観的な興奮と身体反応の乖離が
ストンと腹落ちするします
自身の性について興味がある人は(研究家が書いたものが読める忍耐力が必要ですが)
ぜひ読んでみてください。 自分でも気づいてないことがわかると思います
とてもおすすめです
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==
==
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052100606/
はじめに:『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム』
2024.5.30
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その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はエミリー・ナゴスキー(著)、小澤身和子(訳)、高尾美穂(監修)の『 私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム 』。その「序章」をお届けします。

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【序章】
大丈夫、あなたは正常です
性教育者をしていると、たくさんの質問をされます。大学の食堂で、料理がのった皿を手に持ったまま、オーガズムについての質問に答えたことがあります。会議が行われているホテルのロビーで呼び止められて、バイブレーターについて質問されたこともあるし、公園のベンチでSNSをチェックしていたら、見知らぬ人から、性器が左右非対称であることについて訊(き)かれたことも。また、学生から、友人から、友人の友人から、見ず知らずの人から、性欲や性的興奮、快楽、痛み、オーガズム、フェチ、妄想、体液などについてのメールをもらったこともあります。
例えばどんな質問かというと……パートナーがはじめると、自分もその気になるけれど、自分からはじめようと思ったことはこれまで一度もないように思う。なぜですか?
ボーイフレンドに「濡(ぬ)れてないから、まだその気になってないんじゃない?」と言われました。でも私は十分興奮していた。それなのにどうして濡れないの?
自分の体を気にして、セックスを楽しめない女性の話を見聞きしてきたけれど、それはまさに私のこと。どうしたら楽しめるようになる?
女性の中には、交際してからしばらくすると、たとえパートナーを愛していても、セックスを望まなくなる人もいるとどこかで読みました。私もそうなのですが、どうしたら、またセックスしたいと思うようになりますか?
オーガズムに達したときに、おしっこをしてしまったかもしれないのだけど……?
オーガズムを感じたことがないような気がするのですが……?
こうした質問のあとには、いつも同じ質問が続きます。
「私はどこかおかしいのでしょうか?」
(答えは、ほとんどいつも「いいえ、おかしくありません」です)
この本には答えが詰まっています。実際に女性の人生を変えた答えや、自分が抱える問題に直結する科学とセックスへの理解を深めて、体との関係が変わった女性たちの実体験から得た答えがまとめられています。まさに私のヒーローである彼女たちの話を語ることで、これを読むあなたに、自分のことを深く掘り下げ、奥深くてユニークな自分の性の可能性を探り、それを実現する力が与えられることを願っています。
セックスにまつわるほんとうの話
世の中には、セックスについて書かれた本やポッドキャスト、テレビ番組や雑誌の記事、みんなのお悩みに答えるラジオ番組まであるのに、どうして私たちはいまだに多くの疑問を抱えているのでしょうか?
ズバリ言いましょう。腹立たしいですが、それは嘘(うそ)を教えられてきたからです──意図的になされたことではないし、誰かのせいでもないけれど、それでも嘘は嘘です。私たちは、真実とは異なる話を聞かされてきました。
西洋の科学や医学では、ほんとうに長い間、女性のセクシュアリティーは男性のセクシュアリティーの「マイナー版」だと考えられてきました──基本的には同じだけれど、男性ほど良くないものだと。
例えば、男性は「ペニスをヴァギナ(腟=ちつ)に挿入するセックス」、つまり性交でオーガズムを感じるので、女性も同じ方法でオーガズムを感じるはずで、もし感じないとすれば、それは女性がおかしいからだと思われていました。
実際には、性交で確実にオーガズムを感じる女性は、全体の約4分の1に過ぎません。残りの75%は、性交でオーガズムを感じることがほとんどない、あるいはまったくないですが、いずれも健康で正常です。女性は手を使ったセックス、オーラルセックス、バイブレーターの使用、乳房への刺激、足の指をしゃぶられるなど、その他の多くの方法ではオーガズムを感じるのに、性交中にはオーガズムを感じないことがあります。でも、それは正常です。
また、男性はペニスが勃起していれば、そのペニスの持ち主も興奮しているというように、性器の反応が心の反応と一致するのが一般的なため、女性の性器の反応も気持ちと一致しているはずだ、と思い込まれてもいました。
女性の中にはそういう人もいます。ですが、多くの女性はそうではありません。完全に正常で健康な女性が、「性的興奮の不一致」──性器の反応(濡れているか、乾いているか)が、頭の中(興奮しているか、興奮していないか)と一致しない──を経験することがあるのです。
また、男性は突発的に、なんの前触れもなくセックスをしたくなるものだから、当然女性もそうだろうと思われていました。
ですが、必ずしもそうとは限りません。完全に正常で健康な女性が、「自発的な性欲」を覚えないことがある。でもその代わりに、とてもエロティックな状況になったときにだけ欲望が表れる、「反応的な性欲」を経験することがあるのです。
現実として、女性と男性は異なります。
でも、ちょっと待ってください。女性も男性もオーガズム、性欲、性的興奮を経験するし、男性もまた、反応的な性欲や、性的興奮の不一致、性交中にオーガズムに到達しない、などを経験することがあります。女性も男性も恋に落ち、妄想を膨らませ、マスターベーション(自慰行為)をし、セックスに戸惑い、恍惚(こうこつ)とするような快楽を味わえるのです。女性も男性も、体液を分泌し、エロティックな想像が生み出す禁断の道を辿(たど)り、予想もしないところで唐突にセックスをはじめ、また、予想もしないところで唐突にセックスを断られる(やんわりと、あるいはそうでない場合も)じゃないですか。
では、女性と男性はほんとうにそれほど違うのでしょうか?
問題は、私たちがセックスを、「行動」として捉えるよう教えられ、行動に至るまでの生物的、心理的、そして社会的な過程をないがしろにしてきたことにあります。私たちは生理的な反応──血流量や性器から出る分泌物、心拍数などについてはよく考えます。また、社会的な行動──ベッドの中で何をするか、誰とするか、どれくらいの頻度でするかなどについてもよく考えます。セックスに関する本は、平均的なカップルは週に何回セックスしているかや、オーガズムに達する方法に焦点を当てているものが実に多く、そうした本が役立つこともあるでしょう。
でも、人間のセクシュアリティーをほんとうに理解しようと思ったら、行動だけではとうてい無理です。行動を見ることでセックスを理解しようとするのは、カップルが結婚式で撮った写真と離婚届を見ることで愛を理解しようとするようなもの。ふたりが結婚して離婚した、という「起きたこと」については説明できても、理解は深まりませんよね。私たちが知りたいのは、「なぜ」「どのようにして」そうなったのかということです。このカップルは結婚後に愛が冷めてしまって、離婚したのでしょうか? それとも、そもそも愛し合ってもいなかったのに、結婚を余儀なくされて、離婚してやっと自由になれたとか? ちゃんとした証拠がない以上、ただの推測に過ぎません。
ごく最近まで、セックスについてはほとんど推測で語られてきました。しかし今、性科学は重要な局面を迎えています。人間の性的反応について何十年も研究してきた結果、ようやく「なぜ」「どのようにして」という性的な行動を裏づけるプロセスが明らかになりつつあるからです。
20世紀最後の10年間、「性・性差・再生産のためのキンゼイ研究所」のエリック・ヤンセンとジョン・バンクロフトは、人間の性的反応を体系化し、セックスを真に理解するための原則をまとめました。彼らの提示する「二重支配モデル」によれば、人間の脳内にある性的反応のメカニズムは、「性のアクセル」と「性のブレーキ」という2つの普遍的な構成要素から成り立ち、これらは、性器への刺激、視覚的な刺激、感情への刺激など、さまざまな性的な刺激に反応します。そして、アクセルとブレーキの感度は人によって異なるというのです。
つまり、性的興奮、性欲、オーガズムはほぼ普遍的な経験だが、いつ、どのようにそれらを経験するかは、ブレーキとアクセルの感度と、刺激の種類によって大きく変わるということです。
これこそが、性的反応や行動の基礎となるメカニズムであり、「なぜ」、「どのようにして」を説明するものです。本書を通じて私がお話しすることには、通底するルールがあります──私たちはみな、同じパーツでできていますが、一人ひとりのパーツは、それぞれ唯一無二の方法で構成されていて、生涯のうちに変化する可能性もあるということ。
どの組織も他の組織より優れていたり劣っていたりせず、私たちの一生におけるどの局面も他の局面より優れていたり劣っていたりすることはありません──ただ、それぞれ「違う」というだけです。リンゴの木は、どんな品種でも健康でいられます。品種によっては、太陽の光が常に当たっていないと育たなかったり、陰があったほうがよく育ったりするものもあるかもしれません。リンゴの木は、種のとき、苗木のとき、成長するとき、季節の終わりに休眠状態に入るときも、夏の終わりにたわわに実をつけるときと同様に、健康でいられます。ただ、それぞれの局面で必要なものが異なるだけです。
それはあなたも同じで、性的な発育がはじまるとき、成長するとき、そして自分の体に対する自信と喜びを持って生きる実感を得られるとき……そのどの段階にあっても、健康で正常です。太陽の光をたくさん浴びたいと思っても健康だし、日陰を楽しんでいても健康。私たちはみな同じで、私たちはみな違う。そして私たちはみな正常。それが真実です。
本書の構成
この本は第1部『私たちが知らない基礎知識』、第2部『セックスを左右する私たちの〈文脈〉』、第3部『私たちのセックスはこうなっている』、第4部『エクスタシーは私たちのもの』という4部構成になっています。
第1部の3つの章では、誰もが生まれながらにして持っている基本的なハードウェア──体、脳、そして〈文脈〉──について説明しています。第1章では性器について、各パーツ、それらのパーツに押しつけられている意味、そして、「あなたの性器はそのままの状態で、完全に健康で美しい」ことを決定づける科学についてお話しします。第2章では、脳内の性的反応メカニズム──アクセル(興奮)とブレーキ(抑制)の「二重支配モデル」を詳しく説明します。そして第3章では、あなたの性的なアクセルとブレーキが、脳内や周りの環境にある他のたくさんのシステムとどのように相互作用するのか、今この瞬間にも、特定の感覚や人があなたを興奮させるのか、しないのか、それらがどのように方向づけられているのかを、紹介していきます。
第2部では、基本的なハードウェアが、あなたの感情、人間関係、体に対する思い、そしてセックスに対する姿勢などの影響を受けて、実際の生活の中でどのように機能するかについて考えます。第4章では、ストレスと愛着という2つの主要な感情システムと、あなたの性的反応にそれらが影響を及ぼす方法が、いかに矛盾しているのかに焦点を当てます。第5章では、性機能を決めつけて抑圧する文化的な圧力について説明し、これの良い側面を最大限に活(い)かして、否定的な側面を克服するにはどうしたらいいかをお伝えします。そして体や脳と同様に、あなたの置かれた環境や現在の精神状態といった〈文脈〉も、セクシュアル・ウェルネス(性の健康)にとって非常に重要であることを学びます。これらの内容を習得すれば、あなたのセックスライフには大きな変化が表れることでしょう──もしかしたらこれからの人生までもが、大きく変わるかもしれません。
第3部では、性的反応そのものについて論じ、長年信じられてきた危険な2つの神話を徹底的に批判し、叩(たた)きのめします。第6章では、快楽や性欲は、性器の反応と関係があるのか否か、その根拠を明らかにします。そして、先ほど述べた「性的興奮の不一致」が、なぜ正常かつ健康なのかを学びます。第7章を読み終えれば、誰かが「性衝動」なんて言うのを聞くたびに、ああ、でもセックスは衝動ではないから、と思わずにはいられなくなるでしょう。この章では、「反応的な性欲」の仕組みについて説明します。もし、あなた(あるいはパートナー)が、セックスに対する関心が増したり減ったりしたことがあるなら、この章は特に重要になります。
そして第4部では、セックスを完全に自分のものにする方法、つまり、人生で最高の性の喜びを生み出す方法を説明します。第8章は、オーガズムについてです。オーガズムとはいったいなんなのか、何がオーガズムではないのか、オーガズムに達する方法、そして、星を虹に変えてしまうような、本で読んだオーガズムを実際に体験する方法を記しています。そして最後に、第9章では、性生活を向上させるためにできる、たった1つの重要なことを述べています。
でもせっかくですから、今ここでもお伝えしましょう。最も重要なのは、あなたの体がどんなパーツでできているかや、どのように構成されているかではなく、それらのパーツについてあなたが「どのように感じているか」です。あなたが自分のセクシュアリティーをありのままに受け入れられれば、恍惚とするような快楽を得られる可能性が最大限に膨らみます。
いくつかの章には、ワークシートやエクササイズなどが含まれています。その多くは楽しみながらできるもので、例えば第3章では、最高のセックスをしたときのことを思い出して、どうして素晴らしかったのか突き止めるよう、あなたに問いかけます。本書のエクササイズはどれも科学的根拠に基づいており、あなたのセックスライフを一変させる実用的なものにアレンジされています。
本書を通じて語られるのは、オリヴィア、メリット、カミラ、ローリーという4人の女性の体験談です。実際の人物ではなく、彼女たちの話は、私が20年間、性教育者として教え、話し、メールを送り、支えてきた数多くの女性たちの実話を統合したものです。顔はこの写真から、腕は別の写真から、脚はまた別の写真から……という具合に、写真をコラージュするように作った人たちだと想像してみてください。
特定の女性たちの話を伝えるのではなく、こうしたスタイルをとることにしたのには2つの理由があります。第一に、彼女たちは秘密保持を前提に私に話をしてくれているため、身元がわからないようにしたかった。そのため、詳細は変えています。そして第二に、1人の女性の話ではなく、私がこれまで見てきた何百人もの女性に共通するテーマという、より大きな話に焦点を当てることで、女性の性体験を可能な限り幅広く伝えられると考えたからです。
各章の終わりには、読みきれなかった人のための「まとめ」があり、その章で最も重要な4つのメッセージが簡潔にまとめられています。もしあなたが「友人のアリスはこの章を読むべきだ!」とか「パートナーがこれを知っていたらいいのに」と思ったなら、まずこのリストを見せることからはじめるといいかもしれません。
いくつかの注意点
まず、私はこの本の中で、医師が赤ちゃんを「女の子」または「男の子」と宣言する理由──トランスジェンダーの性教育者S・ベア・バーグマンが時折「工場で取りつけられたパーツ」と呼ぶもの──について解剖学的な詳細を述べます。わかりやすくするために、そうしたパーツについて話すときは、「メス」または「オス」という、生物学で使われる、多くの有性生殖種を表す言葉を使用します。人間についてのみ話すときは、その人のアイデンティティーと社会的役割を示す「女性」または「男性」という言葉を使います。
ジェンダーに関するさらなる注意点──本書は既存の科学を基盤にしているため、私が「女性」という言葉を使うときはほとんどの場合、それはシスジェンダーの女性を指します。つまり、周りの大人たちに「女の子だ!」と宣言させるような体で生まれ、女の子として育てられ、今では「女性」という社会的役割と心理的アイデンティティーに違和感を抱いていない人たちのことです。このような特徴が1つもない女性も大勢いるし、アイデンティティーが「女性」ではなくても、これらの特徴の1つ以上に当てはまる人も大勢います。トランスジェンダーやノンバイナリー〔前者は体の性と心の性が一致せず、違和感を抱いている人の総称。後者は性自認や性表現において、従来の男性・女性という二元的なカテゴリーに当てはまらないセクシュアリティーを指す〕の人々も、科学的根拠に基づいた快楽を重視する素晴らしい性教育を受けてしかるべきで、トランスジェンダーの性機能に関する研究はまだ(強調しておきます、まだ!)少ないので、シスジェンダーの女性のセクシュアル・ウェルネスに当てはまることが、トランスジェンダーの人々にも当てはまるとは、確信を持って言えません。今も研究が進んでいるはずですが、今後数十年の間にさらに進めば判明するでしょう。シスジェンダーの男性も含め、どんな人もジェンダーに関係なく、(不完全ではあるものの)既存の科学から多くのことを学べると私は確信しています。しかし今の段階で、この本に関しては、ほとんどシスジェンダーを対象とした科学に基づいていることを、ここに記しておきます。
第三に、私は女性のセクシュアル・ウェルネスを推進するために、科学に何ができるのかを知ろうと、情熱を持って取り組んでいます。この本では、自分の体に自信と喜びを持って生きることを女性に教えるために行われた研究を紹介しています。ですが、時に意図的に、実証的な内容を含めたり、除いたりしています。その判断は「この事実は、女性がより良い性生活を送るために役立つのか。それとも素晴らしいし重要だけれども、謎が残る実証結果なのか?」と自問して決めました。
そして本書には謎がある部分は含めず、女性の日常生活に最も深く関連する科学だけを残しました。ですからこの本には、女性のセクシュアリティーに関するすべての情報が記されているわけではありません──全部書き出そうとしたら、とても1冊では収まりきらないでしょう。その代わり、私が性教育者として女性のセクシュアル・ウェルネス、性への主体性、快楽を推進する仕事をしてきた中で、最も強力で有意義だと思ったものを載せています。
本書の目的は、女性のセクシュアル・ウェルネスについて、科学的根拠に基づいた新しい考え方を提示することです。新しい考え方が生まれるときはいつもそうであるように、この本も多くの既存の知識に疑問を投げかけています。さらに深堀りしたければ、巻末に載せた参考文献を読んでみてください。また、複雑で多面的な学術研究を実用的な読み物にするために私が踏んだプロセスについても、巻末の注記に詳細に記されています。
自分はおかしいと感じていたら、あるいはそういう人が周りにいたら
第1章に入る前に、もう1つだけ。少し前に、私たちはみな、嘘を教えられてきたと述べたのを覚えていますか? その嘘がもたらした影響についてお話しするために、少し時間を取りたいと思います。
私のワークショップや授業、講演会に来る実に多くの女性が、自分は性的に「おかしい」と思い込んでいます。機能不全だとか、異常だと感じているのです。そのうえ、医療の専門家やセラピスト、パートナー、家族、友人からの情報やサポートが足りないことに、不安や不満、絶望を感じています。
彼女たちは、「リラックスすればいいんだよ」とか、「ワインを飲んでみたら?」とか、「女性はそこまでセックスをしたがらないものだよ。あきらめるんだね」とか、「セックスって、痛いときもあるものだよ。どうにかして、やり過ごせないの?」などと言われてきました。
私は彼女たちが経験している不満や失望を理解しています。この本の後半では、人々を欲求不満や失望に陥れ、希望や喜びから切り離している、神経学的なプロセスについて説明しています。そして、そこから抜け出すための科学的な方法を解説しています。
今、あなたにぜひ知っておいてほしいことがあります。この本を読めば、あなたがセクシュアリティーについて経験していること──興奮、性欲、オーガズム、痛み、不感など──はどれも、不適切な世界で生きているあなたの性的反応のメカニズムが、適切に機能しているからだとわかるでしょう。あなたはなんの問題もないし、正常です。おかしいのは、あなたの周りの世界のほうですから。
実に厄介な話ですよね。
でも良い点として、性的反応のメカニズムを理解すると、不適切な世界でも、周りの環境と脳をコントロールし、自分の性的な潜在能力を最大限に引き出せるようになります。そして、環境と脳を変えれば、性的機能を変える──救う──ことができるのです。
私は、この本に書かれた情報によって、実際に女性たちのセクシュアル・ウェルネスに変化が表れるのを目の当たりにしてきました。また、男性が女性のパートナーに対する理解を深めるのを見てきました。同性のカップルがお互いに顔を見合わせて、「ああ、そういうことだったのか」と言うのも見ましたし、学生や友人、ブログの読者、そして性教育者仲間までもが、この本を読んだり、私の講演を聴いたりして、「どうして今まで誰も教えてくれなかったんだろう? これで納得だよ!」と言うのも目にしました。
この本は、きっとあなたの助けになるはずです。女性が自分のセクシュアリティーに正しく生きることは、おかしいのではないか──そう思える文化のせいで負うことになった傷をすべて癒やすには、足りないかもしれませんが、あなたを救うための強力なツールとなるでしょう。
どうしてそんなことが言いきれるのかって?
それはもちろん、証拠があるからです!
ある学期末、私は187人の学生に、私の授業で学んだほんとうに重要だと思うことを1つ書いてもらいました。
その一部をご紹介しましょう。
「私って正常なんだ!」
「私はおかしくない」
「正常だとわかって、これからの人生を自信と喜びを持って歩むことができます」
「私は正常なんですね! また、自発的な性欲を持つ人もいれば、反応的な性欲を持つ人もいるという事実も知れたことで、自分の人生をほんとうに理解することができました」
「さまざまな女性がいるということ! そして、他の多くの女性と同じような経験をしていないからといって、私が異常であるとは言えないということ。女性の性欲、性的興奮、反応などは、驚くほど多様だということ」
「セクシュアリティーに関して言えば、人は、ものすごくさまざまだということ」
「みんな違っていて、すべてが正常であり、まったく同じ人は誰一人いないということ。誰一人!」
その他にもたくさんありますが、半数以上の学生が、「自分が正常であることを知った」と書いていました。
私は自分のオフィスで、目に涙を浮かべながら回答を読みました。授業で、学生たちを「誰もが正常」というすぐにでも知るべき、とても重要な事実に導けたと思えたからです。
女性のセクシュアル・ウェルネスに関する科学の歴史は浅く、学ぶべきことはまだたくさんあります。しかし、この若い科学はすでに真実をいくつも発見し、そのおかげで学生たちは自身の体との付き合い方を変えることができました。間違いなく私もそのひとりです。私たちは、自分はおかしい、機能不全で魅力がなく、愛されることはないと感じさせる文化の中で生きています。ですが、科学や体験談、そしてセックスに肯定的な洞察をみんなで共有すれば、誰もが自信を持ち、楽しいセックスが絶対にできる。それを証明したくて、私はこの本を書きました。
本書は約束します。今、あなたがセクシュアリティーの旅の途中であろうと、素晴らしいセックスライフを送っていてそれをさらに深めようと思っていようと、悩んでいて解決策を見つけたいと思っていようと、読後にはあなたのセックスライフは改善され、自分と性に関する理解を変える、何かを学ぶことでしょう。そして、たとえ今はまだそう思えなくても、自分のセクシュアリティーはすでに完璧で健康なのだと気づくでしょう。
なんせ、科学がそう示しているんですから。これから、証明していきますよ!
【目次】

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著者紹介
エミリー・ナゴスキー
性教育者
著書『私たちのセクシュアル・ウェルネス(原題:Come As You Are)』はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなり、TEDトークの再生数は数百万回を誇る。Netflixのドキュメンタリー・シリーズ『快楽の原則』にも出演。キャリアの始まりは、デラウェア大学在学中にボランティアとして学生たちに健康、とくに性についてのアドバイザーとなる訓練を受けたことだった。大学卒業後はインディアナ大学大学院でカウンセリング学の修士号と健康行動学の博士号を取得。同大学キンゼイ研究所で研修を受けたのち、スミス大学で8年にわたって教鞭を執った。現在は執筆と講演活動を中心に活動。漫画家の夫と2匹の犬、2匹の猫とともにマサチューセッツ州西部に暮らす。(イラスト:©Miona Mori)…詳細を見る
私たちのセクシュアル・ウェルネス
エミリー・ナゴスキー 著
2,640円(税込)
==
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052100606/
はじめに:『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム』
2024.5.30
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その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はエミリー・ナゴスキー(著)、小澤身和子(訳)、高尾美穂(監修)の『 私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム 』。その「序章」をお届けします。

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【序章】
大丈夫、あなたは正常です
性教育者をしていると、たくさんの質問をされます。大学の食堂で、料理がのった皿を手に持ったまま、オーガズムについての質問に答えたことがあります。会議が行われているホテルのロビーで呼び止められて、バイブレーターについて質問されたこともあるし、公園のベンチでSNSをチェックしていたら、見知らぬ人から、性器が左右非対称であることについて訊(き)かれたことも。また、学生から、友人から、友人の友人から、見ず知らずの人から、性欲や性的興奮、快楽、痛み、オーガズム、フェチ、妄想、体液などについてのメールをもらったこともあります。
例えばどんな質問かというと……パートナーがはじめると、自分もその気になるけれど、自分からはじめようと思ったことはこれまで一度もないように思う。なぜですか?
ボーイフレンドに「濡(ぬ)れてないから、まだその気になってないんじゃない?」と言われました。でも私は十分興奮していた。それなのにどうして濡れないの?
自分の体を気にして、セックスを楽しめない女性の話を見聞きしてきたけれど、それはまさに私のこと。どうしたら楽しめるようになる?
女性の中には、交際してからしばらくすると、たとえパートナーを愛していても、セックスを望まなくなる人もいるとどこかで読みました。私もそうなのですが、どうしたら、またセックスしたいと思うようになりますか?
オーガズムに達したときに、おしっこをしてしまったかもしれないのだけど……?
オーガズムを感じたことがないような気がするのですが……?
こうした質問のあとには、いつも同じ質問が続きます。
「私はどこかおかしいのでしょうか?」
(答えは、ほとんどいつも「いいえ、おかしくありません」です)
この本には答えが詰まっています。実際に女性の人生を変えた答えや、自分が抱える問題に直結する科学とセックスへの理解を深めて、体との関係が変わった女性たちの実体験から得た答えがまとめられています。まさに私のヒーローである彼女たちの話を語ることで、これを読むあなたに、自分のことを深く掘り下げ、奥深くてユニークな自分の性の可能性を探り、それを実現する力が与えられることを願っています。
セックスにまつわるほんとうの話
世の中には、セックスについて書かれた本やポッドキャスト、テレビ番組や雑誌の記事、みんなのお悩みに答えるラジオ番組まであるのに、どうして私たちはいまだに多くの疑問を抱えているのでしょうか?
ズバリ言いましょう。腹立たしいですが、それは嘘(うそ)を教えられてきたからです──意図的になされたことではないし、誰かのせいでもないけれど、それでも嘘は嘘です。私たちは、真実とは異なる話を聞かされてきました。
西洋の科学や医学では、ほんとうに長い間、女性のセクシュアリティーは男性のセクシュアリティーの「マイナー版」だと考えられてきました──基本的には同じだけれど、男性ほど良くないものだと。
例えば、男性は「ペニスをヴァギナ(腟=ちつ)に挿入するセックス」、つまり性交でオーガズムを感じるので、女性も同じ方法でオーガズムを感じるはずで、もし感じないとすれば、それは女性がおかしいからだと思われていました。
実際には、性交で確実にオーガズムを感じる女性は、全体の約4分の1に過ぎません。残りの75%は、性交でオーガズムを感じることがほとんどない、あるいはまったくないですが、いずれも健康で正常です。女性は手を使ったセックス、オーラルセックス、バイブレーターの使用、乳房への刺激、足の指をしゃぶられるなど、その他の多くの方法ではオーガズムを感じるのに、性交中にはオーガズムを感じないことがあります。でも、それは正常です。
また、男性はペニスが勃起していれば、そのペニスの持ち主も興奮しているというように、性器の反応が心の反応と一致するのが一般的なため、女性の性器の反応も気持ちと一致しているはずだ、と思い込まれてもいました。
女性の中にはそういう人もいます。ですが、多くの女性はそうではありません。完全に正常で健康な女性が、「性的興奮の不一致」──性器の反応(濡れているか、乾いているか)が、頭の中(興奮しているか、興奮していないか)と一致しない──を経験することがあるのです。
また、男性は突発的に、なんの前触れもなくセックスをしたくなるものだから、当然女性もそうだろうと思われていました。
ですが、必ずしもそうとは限りません。完全に正常で健康な女性が、「自発的な性欲」を覚えないことがある。でもその代わりに、とてもエロティックな状況になったときにだけ欲望が表れる、「反応的な性欲」を経験することがあるのです。
現実として、女性と男性は異なります。
でも、ちょっと待ってください。女性も男性もオーガズム、性欲、性的興奮を経験するし、男性もまた、反応的な性欲や、性的興奮の不一致、性交中にオーガズムに到達しない、などを経験することがあります。女性も男性も恋に落ち、妄想を膨らませ、マスターベーション(自慰行為)をし、セックスに戸惑い、恍惚(こうこつ)とするような快楽を味わえるのです。女性も男性も、体液を分泌し、エロティックな想像が生み出す禁断の道を辿(たど)り、予想もしないところで唐突にセックスをはじめ、また、予想もしないところで唐突にセックスを断られる(やんわりと、あるいはそうでない場合も)じゃないですか。
では、女性と男性はほんとうにそれほど違うのでしょうか?
問題は、私たちがセックスを、「行動」として捉えるよう教えられ、行動に至るまでの生物的、心理的、そして社会的な過程をないがしろにしてきたことにあります。私たちは生理的な反応──血流量や性器から出る分泌物、心拍数などについてはよく考えます。また、社会的な行動──ベッドの中で何をするか、誰とするか、どれくらいの頻度でするかなどについてもよく考えます。セックスに関する本は、平均的なカップルは週に何回セックスしているかや、オーガズムに達する方法に焦点を当てているものが実に多く、そうした本が役立つこともあるでしょう。
でも、人間のセクシュアリティーをほんとうに理解しようと思ったら、行動だけではとうてい無理です。行動を見ることでセックスを理解しようとするのは、カップルが結婚式で撮った写真と離婚届を見ることで愛を理解しようとするようなもの。ふたりが結婚して離婚した、という「起きたこと」については説明できても、理解は深まりませんよね。私たちが知りたいのは、「なぜ」「どのようにして」そうなったのかということです。このカップルは結婚後に愛が冷めてしまって、離婚したのでしょうか? それとも、そもそも愛し合ってもいなかったのに、結婚を余儀なくされて、離婚してやっと自由になれたとか? ちゃんとした証拠がない以上、ただの推測に過ぎません。
ごく最近まで、セックスについてはほとんど推測で語られてきました。しかし今、性科学は重要な局面を迎えています。人間の性的反応について何十年も研究してきた結果、ようやく「なぜ」「どのようにして」という性的な行動を裏づけるプロセスが明らかになりつつあるからです。
20世紀最後の10年間、「性・性差・再生産のためのキンゼイ研究所」のエリック・ヤンセンとジョン・バンクロフトは、人間の性的反応を体系化し、セックスを真に理解するための原則をまとめました。彼らの提示する「二重支配モデル」によれば、人間の脳内にある性的反応のメカニズムは、「性のアクセル」と「性のブレーキ」という2つの普遍的な構成要素から成り立ち、これらは、性器への刺激、視覚的な刺激、感情への刺激など、さまざまな性的な刺激に反応します。そして、アクセルとブレーキの感度は人によって異なるというのです。
つまり、性的興奮、性欲、オーガズムはほぼ普遍的な経験だが、いつ、どのようにそれらを経験するかは、ブレーキとアクセルの感度と、刺激の種類によって大きく変わるということです。
これこそが、性的反応や行動の基礎となるメカニズムであり、「なぜ」、「どのようにして」を説明するものです。本書を通じて私がお話しすることには、通底するルールがあります──私たちはみな、同じパーツでできていますが、一人ひとりのパーツは、それぞれ唯一無二の方法で構成されていて、生涯のうちに変化する可能性もあるということ。
どの組織も他の組織より優れていたり劣っていたりせず、私たちの一生におけるどの局面も他の局面より優れていたり劣っていたりすることはありません──ただ、それぞれ「違う」というだけです。リンゴの木は、どんな品種でも健康でいられます。品種によっては、太陽の光が常に当たっていないと育たなかったり、陰があったほうがよく育ったりするものもあるかもしれません。リンゴの木は、種のとき、苗木のとき、成長するとき、季節の終わりに休眠状態に入るときも、夏の終わりにたわわに実をつけるときと同様に、健康でいられます。ただ、それぞれの局面で必要なものが異なるだけです。
それはあなたも同じで、性的な発育がはじまるとき、成長するとき、そして自分の体に対する自信と喜びを持って生きる実感を得られるとき……そのどの段階にあっても、健康で正常です。太陽の光をたくさん浴びたいと思っても健康だし、日陰を楽しんでいても健康。私たちはみな同じで、私たちはみな違う。そして私たちはみな正常。それが真実です。
本書の構成
この本は第1部『私たちが知らない基礎知識』、第2部『セックスを左右する私たちの〈文脈〉』、第3部『私たちのセックスはこうなっている』、第4部『エクスタシーは私たちのもの』という4部構成になっています。
第1部の3つの章では、誰もが生まれながらにして持っている基本的なハードウェア──体、脳、そして〈文脈〉──について説明しています。第1章では性器について、各パーツ、それらのパーツに押しつけられている意味、そして、「あなたの性器はそのままの状態で、完全に健康で美しい」ことを決定づける科学についてお話しします。第2章では、脳内の性的反応メカニズム──アクセル(興奮)とブレーキ(抑制)の「二重支配モデル」を詳しく説明します。そして第3章では、あなたの性的なアクセルとブレーキが、脳内や周りの環境にある他のたくさんのシステムとどのように相互作用するのか、今この瞬間にも、特定の感覚や人があなたを興奮させるのか、しないのか、それらがどのように方向づけられているのかを、紹介していきます。
第2部では、基本的なハードウェアが、あなたの感情、人間関係、体に対する思い、そしてセックスに対する姿勢などの影響を受けて、実際の生活の中でどのように機能するかについて考えます。第4章では、ストレスと愛着という2つの主要な感情システムと、あなたの性的反応にそれらが影響を及ぼす方法が、いかに矛盾しているのかに焦点を当てます。第5章では、性機能を決めつけて抑圧する文化的な圧力について説明し、これの良い側面を最大限に活(い)かして、否定的な側面を克服するにはどうしたらいいかをお伝えします。そして体や脳と同様に、あなたの置かれた環境や現在の精神状態といった〈文脈〉も、セクシュアル・ウェルネス(性の健康)にとって非常に重要であることを学びます。これらの内容を習得すれば、あなたのセックスライフには大きな変化が表れることでしょう──もしかしたらこれからの人生までもが、大きく変わるかもしれません。
第3部では、性的反応そのものについて論じ、長年信じられてきた危険な2つの神話を徹底的に批判し、叩(たた)きのめします。第6章では、快楽や性欲は、性器の反応と関係があるのか否か、その根拠を明らかにします。そして、先ほど述べた「性的興奮の不一致」が、なぜ正常かつ健康なのかを学びます。第7章を読み終えれば、誰かが「性衝動」なんて言うのを聞くたびに、ああ、でもセックスは衝動ではないから、と思わずにはいられなくなるでしょう。この章では、「反応的な性欲」の仕組みについて説明します。もし、あなた(あるいはパートナー)が、セックスに対する関心が増したり減ったりしたことがあるなら、この章は特に重要になります。
そして第4部では、セックスを完全に自分のものにする方法、つまり、人生で最高の性の喜びを生み出す方法を説明します。第8章は、オーガズムについてです。オーガズムとはいったいなんなのか、何がオーガズムではないのか、オーガズムに達する方法、そして、星を虹に変えてしまうような、本で読んだオーガズムを実際に体験する方法を記しています。そして最後に、第9章では、性生活を向上させるためにできる、たった1つの重要なことを述べています。
でもせっかくですから、今ここでもお伝えしましょう。最も重要なのは、あなたの体がどんなパーツでできているかや、どのように構成されているかではなく、それらのパーツについてあなたが「どのように感じているか」です。あなたが自分のセクシュアリティーをありのままに受け入れられれば、恍惚とするような快楽を得られる可能性が最大限に膨らみます。
いくつかの章には、ワークシートやエクササイズなどが含まれています。その多くは楽しみながらできるもので、例えば第3章では、最高のセックスをしたときのことを思い出して、どうして素晴らしかったのか突き止めるよう、あなたに問いかけます。本書のエクササイズはどれも科学的根拠に基づいており、あなたのセックスライフを一変させる実用的なものにアレンジされています。
本書を通じて語られるのは、オリヴィア、メリット、カミラ、ローリーという4人の女性の体験談です。実際の人物ではなく、彼女たちの話は、私が20年間、性教育者として教え、話し、メールを送り、支えてきた数多くの女性たちの実話を統合したものです。顔はこの写真から、腕は別の写真から、脚はまた別の写真から……という具合に、写真をコラージュするように作った人たちだと想像してみてください。
特定の女性たちの話を伝えるのではなく、こうしたスタイルをとることにしたのには2つの理由があります。第一に、彼女たちは秘密保持を前提に私に話をしてくれているため、身元がわからないようにしたかった。そのため、詳細は変えています。そして第二に、1人の女性の話ではなく、私がこれまで見てきた何百人もの女性に共通するテーマという、より大きな話に焦点を当てることで、女性の性体験を可能な限り幅広く伝えられると考えたからです。
各章の終わりには、読みきれなかった人のための「まとめ」があり、その章で最も重要な4つのメッセージが簡潔にまとめられています。もしあなたが「友人のアリスはこの章を読むべきだ!」とか「パートナーがこれを知っていたらいいのに」と思ったなら、まずこのリストを見せることからはじめるといいかもしれません。
いくつかの注意点
まず、私はこの本の中で、医師が赤ちゃんを「女の子」または「男の子」と宣言する理由──トランスジェンダーの性教育者S・ベア・バーグマンが時折「工場で取りつけられたパーツ」と呼ぶもの──について解剖学的な詳細を述べます。わかりやすくするために、そうしたパーツについて話すときは、「メス」または「オス」という、生物学で使われる、多くの有性生殖種を表す言葉を使用します。人間についてのみ話すときは、その人のアイデンティティーと社会的役割を示す「女性」または「男性」という言葉を使います。
ジェンダーに関するさらなる注意点──本書は既存の科学を基盤にしているため、私が「女性」という言葉を使うときはほとんどの場合、それはシスジェンダーの女性を指します。つまり、周りの大人たちに「女の子だ!」と宣言させるような体で生まれ、女の子として育てられ、今では「女性」という社会的役割と心理的アイデンティティーに違和感を抱いていない人たちのことです。このような特徴が1つもない女性も大勢いるし、アイデンティティーが「女性」ではなくても、これらの特徴の1つ以上に当てはまる人も大勢います。トランスジェンダーやノンバイナリー〔前者は体の性と心の性が一致せず、違和感を抱いている人の総称。後者は性自認や性表現において、従来の男性・女性という二元的なカテゴリーに当てはまらないセクシュアリティーを指す〕の人々も、科学的根拠に基づいた快楽を重視する素晴らしい性教育を受けてしかるべきで、トランスジェンダーの性機能に関する研究はまだ(強調しておきます、まだ!)少ないので、シスジェンダーの女性のセクシュアル・ウェルネスに当てはまることが、トランスジェンダーの人々にも当てはまるとは、確信を持って言えません。今も研究が進んでいるはずですが、今後数十年の間にさらに進めば判明するでしょう。シスジェンダーの男性も含め、どんな人もジェンダーに関係なく、(不完全ではあるものの)既存の科学から多くのことを学べると私は確信しています。しかし今の段階で、この本に関しては、ほとんどシスジェンダーを対象とした科学に基づいていることを、ここに記しておきます。
第三に、私は女性のセクシュアル・ウェルネスを推進するために、科学に何ができるのかを知ろうと、情熱を持って取り組んでいます。この本では、自分の体に自信と喜びを持って生きることを女性に教えるために行われた研究を紹介しています。ですが、時に意図的に、実証的な内容を含めたり、除いたりしています。その判断は「この事実は、女性がより良い性生活を送るために役立つのか。それとも素晴らしいし重要だけれども、謎が残る実証結果なのか?」と自問して決めました。
そして本書には謎がある部分は含めず、女性の日常生活に最も深く関連する科学だけを残しました。ですからこの本には、女性のセクシュアリティーに関するすべての情報が記されているわけではありません──全部書き出そうとしたら、とても1冊では収まりきらないでしょう。その代わり、私が性教育者として女性のセクシュアル・ウェルネス、性への主体性、快楽を推進する仕事をしてきた中で、最も強力で有意義だと思ったものを載せています。
本書の目的は、女性のセクシュアル・ウェルネスについて、科学的根拠に基づいた新しい考え方を提示することです。新しい考え方が生まれるときはいつもそうであるように、この本も多くの既存の知識に疑問を投げかけています。さらに深堀りしたければ、巻末に載せた参考文献を読んでみてください。また、複雑で多面的な学術研究を実用的な読み物にするために私が踏んだプロセスについても、巻末の注記に詳細に記されています。
自分はおかしいと感じていたら、あるいはそういう人が周りにいたら
第1章に入る前に、もう1つだけ。少し前に、私たちはみな、嘘を教えられてきたと述べたのを覚えていますか? その嘘がもたらした影響についてお話しするために、少し時間を取りたいと思います。
私のワークショップや授業、講演会に来る実に多くの女性が、自分は性的に「おかしい」と思い込んでいます。機能不全だとか、異常だと感じているのです。そのうえ、医療の専門家やセラピスト、パートナー、家族、友人からの情報やサポートが足りないことに、不安や不満、絶望を感じています。
彼女たちは、「リラックスすればいいんだよ」とか、「ワインを飲んでみたら?」とか、「女性はそこまでセックスをしたがらないものだよ。あきらめるんだね」とか、「セックスって、痛いときもあるものだよ。どうにかして、やり過ごせないの?」などと言われてきました。
私は彼女たちが経験している不満や失望を理解しています。この本の後半では、人々を欲求不満や失望に陥れ、希望や喜びから切り離している、神経学的なプロセスについて説明しています。そして、そこから抜け出すための科学的な方法を解説しています。
今、あなたにぜひ知っておいてほしいことがあります。この本を読めば、あなたがセクシュアリティーについて経験していること──興奮、性欲、オーガズム、痛み、不感など──はどれも、不適切な世界で生きているあなたの性的反応のメカニズムが、適切に機能しているからだとわかるでしょう。あなたはなんの問題もないし、正常です。おかしいのは、あなたの周りの世界のほうですから。
実に厄介な話ですよね。
でも良い点として、性的反応のメカニズムを理解すると、不適切な世界でも、周りの環境と脳をコントロールし、自分の性的な潜在能力を最大限に引き出せるようになります。そして、環境と脳を変えれば、性的機能を変える──救う──ことができるのです。
私は、この本に書かれた情報によって、実際に女性たちのセクシュアル・ウェルネスに変化が表れるのを目の当たりにしてきました。また、男性が女性のパートナーに対する理解を深めるのを見てきました。同性のカップルがお互いに顔を見合わせて、「ああ、そういうことだったのか」と言うのも見ましたし、学生や友人、ブログの読者、そして性教育者仲間までもが、この本を読んだり、私の講演を聴いたりして、「どうして今まで誰も教えてくれなかったんだろう? これで納得だよ!」と言うのも目にしました。
この本は、きっとあなたの助けになるはずです。女性が自分のセクシュアリティーに正しく生きることは、おかしいのではないか──そう思える文化のせいで負うことになった傷をすべて癒やすには、足りないかもしれませんが、あなたを救うための強力なツールとなるでしょう。
どうしてそんなことが言いきれるのかって?
それはもちろん、証拠があるからです!
ある学期末、私は187人の学生に、私の授業で学んだほんとうに重要だと思うことを1つ書いてもらいました。
その一部をご紹介しましょう。
「私って正常なんだ!」
「私はおかしくない」
「正常だとわかって、これからの人生を自信と喜びを持って歩むことができます」
「私は正常なんですね! また、自発的な性欲を持つ人もいれば、反応的な性欲を持つ人もいるという事実も知れたことで、自分の人生をほんとうに理解することができました」
「さまざまな女性がいるということ! そして、他の多くの女性と同じような経験をしていないからといって、私が異常であるとは言えないということ。女性の性欲、性的興奮、反応などは、驚くほど多様だということ」
「セクシュアリティーに関して言えば、人は、ものすごくさまざまだということ」
「みんな違っていて、すべてが正常であり、まったく同じ人は誰一人いないということ。誰一人!」
その他にもたくさんありますが、半数以上の学生が、「自分が正常であることを知った」と書いていました。
私は自分のオフィスで、目に涙を浮かべながら回答を読みました。授業で、学生たちを「誰もが正常」というすぐにでも知るべき、とても重要な事実に導けたと思えたからです。
女性のセクシュアル・ウェルネスに関する科学の歴史は浅く、学ぶべきことはまだたくさんあります。しかし、この若い科学はすでに真実をいくつも発見し、そのおかげで学生たちは自身の体との付き合い方を変えることができました。間違いなく私もそのひとりです。私たちは、自分はおかしい、機能不全で魅力がなく、愛されることはないと感じさせる文化の中で生きています。ですが、科学や体験談、そしてセックスに肯定的な洞察をみんなで共有すれば、誰もが自信を持ち、楽しいセックスが絶対にできる。それを証明したくて、私はこの本を書きました。
本書は約束します。今、あなたがセクシュアリティーの旅の途中であろうと、素晴らしいセックスライフを送っていてそれをさらに深めようと思っていようと、悩んでいて解決策を見つけたいと思っていようと、読後にはあなたのセックスライフは改善され、自分と性に関する理解を変える、何かを学ぶことでしょう。そして、たとえ今はまだそう思えなくても、自分のセクシュアリティーはすでに完璧で健康なのだと気づくでしょう。
なんせ、科学がそう示しているんですから。これから、証明していきますよ!
【目次】

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著者紹介
エミリー・ナゴスキー
性教育者
著書『私たちのセクシュアル・ウェルネス(原題:Come As You Are)』はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなり、TEDトークの再生数は数百万回を誇る。Netflixのドキュメンタリー・シリーズ『快楽の原則』にも出演。キャリアの始まりは、デラウェア大学在学中にボランティアとして学生たちに健康、とくに性についてのアドバイザーとなる訓練を受けたことだった。大学卒業後はインディアナ大学大学院でカウンセリング学の修士号と健康行動学の博士号を取得。同大学キンゼイ研究所で研修を受けたのち、スミス大学で8年にわたって教鞭を執った。現在は執筆と講演活動を中心に活動。漫画家の夫と2匹の犬、2匹の猫とともにマサチューセッツ州西部に暮らす。(イラスト:©Miona Mori)…詳細を見る
私たちのセクシュアル・ウェルネス
エミリー・ナゴスキー 著
2,640円(税込)
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特に、「失敗」をどう生き延びるか、私たちが「正常」であることを求めるときに本当は何を求めているかについての終章の議論は、女性のセクシュアル・ウェルネスに限定されない射程があると思う。