2016/11/13

やしの実通信

やしの実通信

『日本-その問題と発展の諸局面』(18) [2016年07月14日(Thu)]
新渡戸著『日本-その問題と発展の諸局面』の第三章「新日本の出現」を5回に分けてなぞってきた。天皇制を中心にまとめるはずが、日清、日露、第一次世界大戦の日本の正義について新渡戸がどう言ってるのか関心がある。
一般的に日本に正義は無い事になってるのだ。

今回は三章の中の 12.日露戦争とその結果、13.日本の世界大戦参加、についてまとめたい。

新渡戸は、日露間の緊張は何十年も続いており、「両国は心で武装してきた。」(152頁)と始める。
何故武装したのか?

「ロシア人は地中海に出口を見つけるのを阻まれて、その欲深い眼を極東に向けたのであった。」1860年ロシアは中国からアムール河東岸領土を獲得。1891年には大連と旅順まで繋がるシベリア横断鉄道の建設が開始。
日本は和平を望んだがロシアの傲慢な振る舞いに対し、残された唯一の道を取らざるを得なかった。ロシアはフランスとドイツの直接的支援を受けていた。「カイゼル・ヴィルヘルム二世こそ、道徳的には、その戦争の発起人だとさえいわれた。(中略)カイゼルはツアーに陰険な策略を用いて、むりやり戦争をさせたという。」(154頁)
新渡戸は、日本の勝利は軍事力だけでなく、赤十字の衛生処置、捕虜の人道的待遇、交通の輸送体系が最後の成功となった事を主張する。ロシアが日本を脅迫して得た中国の全権益を獲得し、ドイツが得た山東は日本軍が取り返し、中国に返還した。
そしてさらなる成功は1905年日英同盟の更新である。今度は10年という期間で下記目的を持っていた。
a) 東亜とインド地域における平和の維持
b) 中国のおける万国通称権益の保持
c) 調印国の東亜及びインドのおける郎度権の維持及び特殊権益の防護。
さらに改定条約には防禦同盟も盛り込まれた。これが第一次世界大戦に繋がる。


日露戦争の不幸な結果はヴィルヘルム二世が”横禍論”を「卑劣な資金」(どのように卑劣なのか気になる)を使ってアメリカに向けて宣伝した事である。新渡戸は「人類の半分以上は「白禍」の犠牲者となっていたことなど、白人のあたまには絶対浮かんでこなかった。」(157頁)と書いている。

さらに日露戦争の勝利は、日本国民の道義崩壊にある、と新渡戸は指摘する。「軍国思想が国民生活のあらゆる水路に流れ込む。」子供たちは兵隊ごっこ、青年大尉は恋愛対象に、老将軍は政府の政策を決定する。
新渡戸はここでバークを引用している。
「戦争は道徳的義務の規則を棚上げにする、そして久しく棚上げにされたものは、すっかり廃棄される危険がある。」


長くなったので 13.日本の世界大戦参加、は次回。