「人は自立しなければ」 東大元助手・最首悟さんを呪縛から解いた娘
神谷裕司
[PR]
東京大教養学部で生物学の助手を27年間務めた最首悟さん(86)。1976年8月、妻の五十鈴さんとの間に、4人目の子どもの星子(せいこ)さんが生まれた。それが、人生の大きな転機になった。
助手になって10年近く、40歳目前になっていた。全力を尽くした大学闘争の波は去り、生き方に迷っているころだった。「研究者としてどのように生きるか、立ち止まっていた」
出産を担当した女性医師から「赤ちゃんはダウン症です。ショックを受けるといけないから、奥さんには2週間は伏せておいた方がいい」と“助言”された。
2週間後に妻にダウン症と告げると、ひどく怒られた。「母親を何だと思ってるの。とにかく育てることしかないでしょ」
「妻はでんと構えていたんです。それで私も目が覚めた。それから妻には頭が上がりません」
星子さんは重い知的障害があり、ことばが出ない。ひとりでは飲み物も食べ物もとれない。排泄(はいせつ)もおむつでしている。白内障を患って手術したが、10歳前後で失明した。
星子さんが生まれたことで「漂っていた自分の人生がつなぎ留められた気がしました。『これで大丈夫』という不思議な安堵(あんど)の気持ちが強かった」。星子さんという“否応(いやおう)なしの存在”のおかげで「人間は自立していなければいけないという呪縛から解放された」とも話す。
星子さんを授かった最首さん…

