武士道 (岩波文庫 青118-1)
5つ星のうち4.0クリスチャンによる武士道
投稿者asatobon2003年12月15日
形式: 文庫
この本を読むときに、よろしければ気にとめて頂きたい点があります。
それは、著者、翻訳者ともにキリスト教徒であると言うことです。
(本の内容については、他の方々が既に充分な書評をかかれております。)
新渡戸稲造はクエーカー派と呼ばれるキリスト教徒です。
クエーカーは「内なる光」という直感的な「良心」を重視し、
「沈黙の礼拝」を行います。日本の座禅ににている礼拝で、
儀式もなく、聖書に元ずく平和主義で知られているグループです。
アメリカ・イギリス両クエーカーの団体は1947年に
ノーベル平和賞を受賞した経験があります。
一方、翻訳者の矢内原忠雄は内村鑑三の流れを汲む「無教会」という
キリスト教の伝道者で、戦後2代目の東京大学総長に選ばれており、
激務にありながら、毎週日曜日は集会で「聖書講義」を行った方です。
第二次大戦中は、非戦論者として知られました。
そのために、東大教授職を追われた方です。
私たちは、この「武士道」を読むに当たり、
なぜこの純日本的とも言われる武士道精神が、
俗に言う「西洋の宗教」であるキリスト教の信者によって書かれたのか、
静かに考えてみることは、意味があることではないでしょうか。
なぜこの本が、非キリスト教徒によって
書かれることがなかったのか、考えることは大事であると思います。
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5つ星のうち5.0武士道はいまだ死せず
投稿者grd22001年9月17日
形式: 文庫
武士道は、日本を表徴する桜の花と同じように、わが国土に固有の花である。
『武士道』第1章はこうした象徴的な一文から始まる。
桜の花が日本の武士道を象徴するとすれば、西欧の騎士道ないし哲学を象徴するものは薔薇である。
薔薇は強い芳香を持ち、優雅に咲く花である。しかし、その美しさの裏側には棘があり、枯れてもなお散らずに残りつづけようとする生への執着がある。
一方、我々は潔く散りゆく桜の花びらに美を見い出し、その淡い芳香に飽きることがない。
このように、西洋のものが「生の哲学」であるなら、
日本のそれは「死の哲学」であると言っていいであろう。ただしこの「死の哲学」は、「死」を奨励するという種類のものではなくて、むしろ人生をいかに生きるべきかという求道的倫!理的な問題を、万人にとって絶対的な存在である死を出発点として扱おうとする問題意識のことなのである。死というものを身近に感じ、これを受け入れ、日々これに対面することによって死から解放され、むしろ「生きる覚悟」というものが確固としたものとなり得るのである。
これに対して、我々が多く学んできた西洋の「生の哲学」がもたらしたものは利殖と保身と享楽の追及でしかなかった。
このような認識のもとに立つことが出来れば、我々は今一度、「武士道」という精神に学ぶことが大きいであろう。
『武士道』はつまり、
いかに死ぬべきかを問うたものではなく、
いかに生きるべきかという問いに対して
闊達自在な日々の心構えを説いたものだからである。
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5つ星のうち4.0確かに名著でした。
投稿者itgakiVINEメンバー2006年10月29日
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「武士道」は封建社会の遺物であり、現代の生活には馴染まない、そんな先入観を持って読みました。が、書かれている事は、武士道が古から日本人の道徳観念を支えていたという事実であり、その書かれている事は本質的で、現代の生活そして生きていく上での姿勢にも十分参考になるものでした。
筆者も認めているように、かつてでも武士道を誤って認識している輩も多かったらしい。例えば、切腹についても軽軽しく腹を切って済ます(それでも凄いけど)ことで潔さを表しているが、本来はそれは犬死であり、軽軽しく死を扱わないことが本来であること。切腹をするからには、その武士道の精神に則った大儀があるべきことが書かれています。武士道にはそのような側面があることや、解釈に誤解があったこととあわせて論じているので、一層武士道の本質が判りやすくなっている印象でした。
前書きにもありますが、日本人の道徳教育は何によってなされてきたかを、異国の人に説明するために書かれた本です。ですので、外国(主にヨーロッパ)の宗教(=キリスト教)や哲学との比較、引用が多く、改めて納得できる事例も多いです。改めて筆者である新渡戸稲造氏の博学には驚かされました。しかも文章も非常に綺麗!本当に凄い人ですね。
私のように何も知らない人間は、「武士道」と聞くだけで右翼的なイメージを持ってしまいます。そのため、この名著と接する機会を逸してきたことを考えると、その本の本質である「日本人の道徳観念」の方を題名とする方が、現代では読まれる機会が増えるのだろうに、とも感じました。
本当は、そんな世の中への迎合より、「武士道」という観念が広がっていくことを願っていますが…。
とにかく、一度読んでみることをお薦めします。
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5つ星のうち5.0「武士道」をもって「日本人」を世界に説明する書
投稿者青ち2005年1月11日
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菅野覚明『武士道の逆襲』(講談社現代新書)に触発されて読んでみた。
本書には、津田左右吉から上に挙げた菅野に至るまで、「実際の武士のあり方を表現していない」という批判がついて回る。「実際の武士」の「武士道」とはどのようなものか、という問題については菅野に譲るとしよう。ここでは、この本はもともと英語で書かれているということ、言い換えれば西洋人に読まれることを前提として書かれたのだ、という点に注意を喚起しておきたい。
新渡戸は必ずしもこの本で武士道そのものを詳述することを目指したのではない。西洋世界に「日本」をいかに説明するか。しかも非西洋でありながら西洋に通じる普遍性があるということをいかに主張するか。彼の関心はそこにこそあったのである。
したがって、この本から読み取れるのは、武士そのもののあり方ではない。アメリカの地で、1899年の時点で、新渡戸が「西洋に相対する日本」をいかにイメージしていたか、ということである。つまり、この本は「武士の時代」の本ではなく、あくまで「明治=近代」の本なのである。
そうした点を踏まえて読めば、得るところはすこぶる多い。近代日本の自己主張の原型が、そこにはある。
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5つ星のうち3.0翻訳本
投稿者カスタマー2004年2月9日
形式: 文庫
「武士道」は自分の精神的なルーツを知る上で、現代の日本人は必ず読んでおくべき書物であると思います。百年前に、これを残してくれた新渡戸稲造に現代日本人は感謝すべきです。二十年近く前に初めて読んだときに、私の根底にあるものを気付かせてもらった一冊で、偉く感動を覚えたものです。
ただ、これは、あくまで翻訳本なので、訳者を選ぶ必要もあります。この岩波文庫版は翻訳が古すぎて(笑ってしまう程ーごめんなさい)、今の時代の人にはとても読みにくく、理解しにくいと思います。原書で読んだほうがわかりやすいとさえ思いました。
ぜひ、現代語訳版で読んでください
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5つ星のうち5.0サムライと美
投稿者ひできVINEメンバー2004年1月10日
形式: 文庫
「ザ・ラスト・サムライ」を見た。ひさびさに「武士道」を読みたくなった。ハリウッド映画に日本の美がなんであったか、日本の武士道がなにであったかを、こんなにヴィジュアルにみせつけられるとは思っていなかった。この主演俳優であるトム・クルーズが撮影中にぼろぼろになるまで読んだというのが本書の英語でかかれた原著であるという。
国際連盟で活躍した新渡戸稲造は、本書によって広く世界に知られたという。ブリティッシュコロンビア大学の新渡戸記念公園とライブラリーを訪問したときのことが思い出される。現在にいたるまで新渡戸稲造の記念碑的な施設が十分に維持管理されていることに新渡戸稲造の遺徳の大きさを見た。
そして、今「武士道」がトム・クルーズや渡辺謙の姿を通じて世界の新たな世代にプレゼンテーションされたことに感動を覚える。世界の人々も「ザ・ラスト・サムライ」を見て本書を読みたくなってくれることを祈りたい。
しかし、新渡戸稲造が描いた独特のストイシズムに基づく日本人の美しさはどこへいってしまったのだろう。節制と恥じを基調とし、なにごとも完璧を求めた人の生き方としての美しさ、世代を超えた稲作による山河の美しさ、伝統的な着物や建物の美しさ。もし「ザ・ラスト・サムライ」と本書だけで日本を知った人が現在の日本を見たら、どのような感想をいだくのだろうか。
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5つ星のうち4.0何度も読まないとその本質の理解には至らないかもしれません
投稿者ひつじ日和2015年9月29日
形式: 文庫
武士道における重要な考え方を体系的に述べています。
義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義・克己・切腹 など。
もともとは英語の本で、海外に向けて書いてあります。
そのためか、海外の思想との比較がありますが、その比較が日本人(特に現代の日本人)には難しいと思いました。
そこがかなり難解に思われるかもしれません。
ただ、日本人の基本的な考え方になっている事は理解できます。
知っておいて損はない知識ではないでしょうか。
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5つ星のうち5.0読むまでこれほど大きな視野で書かれているとは知らなかった
投稿者草雲雀VINEメンバー2006年10月22日
形式: 文庫
武士道の本というと、もっと右寄りの偏った論理で進まれていると思いきや完膚なきまでにその誤った予測を否定された。グローバル的な大きな視野、知識、見聞のもと書かれており、通常の(というと語弊があるかも知れないが)人のレベルでは到底及ばない量、質、範囲の事例を使用して武士道を説明している。その事例は日本よりむしろ海外の例に枚挙を厭わない。
かつ、内容は本質をついておりまず一読するに越したことはないと思われる。
批判はそれからで良い。だが、批判するのも著者の知識に及んでからと考えると気が遠くなるが・・・
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5つ星のうち5.0不朽の日本人理解の手引き
投稿者陽気妃2003年11月17日
形式: 文庫
新渡戸稲造がベルギーの高名な法学者を訪問した折に、話が宗教に及び、その博士が容易に忘れられない口調で「宗教なしとは!道徳教育はどうやってほどこすのですか?」と聞いた。それが「武士道」著作の発端である。
欧米人が理解できるようにと、解説のための事例をかなり広範な欧米の書物から引用しており、新渡戸の博学さに驚かされる。1900年に出版されて以来、多くの言語に翻訳され世界中で読まれ、いまだ日本にはこの「武士道」を超える日本人の気質の解説書が出ていないといわれている。グローバライゼーションの世紀を迎えた今、「日本人とは?」「世界に映る日本とは?」などの命題に参考となる一書。
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