2023/07/25

思想家紹介 井筒俊彦 « 京都大学大学院文学研究科・文学部

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思想家紹介 井筒俊彦

思想家紹介 井筒俊彦


井筒俊彦 1914-1993(大正3-平成5)


略 歴

言語学者、哲学者、イスラーム学者。東京生まれ。幼少のころより在家の禅修行者であった父に独自の内観法を教授され、禅書にも親しんでいた。慶應義塾大学文学部英文科を卒業。卓越した語学力により、当初はギリシャ神秘思想、イスラム思想、コーランの言語哲学的研究に専念。1957年から1958年、日本語ではじめての『コーラン』の原典からの翻訳が岩波文庫から刊行された。ただ、井筒自身は、この翻訳には満足せず、「一番大切な問題である文体を、口語の枠内で徹底的に」改めるなどし、「思想を新たにして全部訳しなおした」『改訳 コーラン』を1961年から1964年にかけて発表(「『コーラン』改訳の序」)。厳密な言語学的研究を基礎とする訳は、現在にいたるまで高く評価されている。また、『コーラン』についての意味論的研究書、『意味の構造』(原著は英語による)の評価も高い。

 井筒は、さらにペルシャ・イスラム哲学の研究へと進み、その成果が日本のイスラム研究の水準を飛躍的に引き上げた。その後、仏教思想・老荘思想・朱子学などを視野に収めた独自の東洋哲学の構築を試みた。慶應義塾大学、カナダ・マッギル大学、イラン王立哲学研究所の教授を歴任。1967年以降は、エラノス学会で主に東アジア思想に関する講演を続けた。

井筒独自の哲学的意味論に基づく多数の英語による論文や著作は、日本のみならず海外においても高く評価されている。日本国内では、井筒生誕百周年を迎えた2013年前後から、母校慶應義塾大学の『三田文学』で二度の井筒特集(2009年・2014年)が刊行されたほか、様々な雑誌や学会で井筒の思想が取り上げられた。

 生涯の研究の集大成として、『井筒俊彦全集』(2013-2016年)および『井筒俊彦英文著作翻訳コレクション』(2016-2019年)が、慶應義塾大学出版会より刊行された。

思 想

井筒は、さまざまな言語で執筆されたの思想の文献を読み解き、そこに表現された世界観を析出することを、自らの著述の基本的な手法とした。思考と言語を切り口とし、人類には共通普遍なものがあることを確信、その体系化を試みたと言える。

晩年には、東アジア、インド、イスラーム、ユダヤの神秘思想をそれぞれの歴史的差異を超えた次元で類型論的に把握し、〈東洋哲学〉として構造化することを目指した。

井筒は、仏教の唯識論における阿頼耶識(あらやしき)——我々が意識することのない最深層に定位する識——を、言語意味論に応用して「言語アラヤ識」と名づけた。多種多様な言語の数だけ思想、意味、世界観・価値観があるとも考えられるが、人類に共通普遍な意味可能体 の貯蔵所あるいは「種子」として、言語アラヤ識があり、様々な形やイメージは、そこから言語や風土・民族性を媒介して結晶する意味構造体であると捉えた(「井筒俊彦 ~語学の天才 知られざる碩学~」)。

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 이즈츠는 다양한 언어로 집필된 사상의 문헌을 읽고, 거기에 표현된 세계관을 석출하는 것을, 자신의 저술의 기본적인 방법으로 했다. 사고와 언어를 자르고, 인류에는 공통 보편적인 것이 있다는 것을 확신, 그 체계화를 시도했다고 할 수 있다

만년에는 동아시아, 인도, 이슬람, 유대의 신비사상을 각각의 역사적 차이를 넘은 차원에서 유형론적으로 파악하여 <동양철학>으로서 구조화하는 것을 목표로 했다. 

 이즈츠는, 불교의 유식론에 있어서의 <아라야식>——우리가 의식하지 않는 최심층에 정위하는 <식> -- 을, 언어 의미론에 응용해 「언어 아라야식」이라고 명명했다. 

다종다양한 언어의 수만큼 사상, 의미, 세계관·가치관이 있다고도 생각할 수 있지만, 인류에 공통 보편적인 의미가능체의 저장소 혹은 「종자」로서 언어 아라야식이 있어, 다양한 형태나 이미지는, 거기에서 언어나 풍토・민족성을 매개하여 결정하는 <의미 구조체>라고 파악했다

(「이통 슌히코 ~어학의 천재 알려지지 않은 귀학~」)
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