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第二巻について
この巻では、一九五四年一二月に発行された『山岸会・山岸式養鶏会会報・第三号』(以下『会報三号』)に掲載されたものから、一九五八年二月に発行された『快適新聞第四三号』に掲載されたものまで、約三年間にわたる、山岸巳代蔵の著作や講演録・口述録及び、山岸の著作ではないかと伝えられ、扱われているものなどを収録した。
『会報三号』において、山岸巳代蔵は『世界革命実践の書』として、〈ヤマギシズム社会の実態(一)〉、〈知的革命私案(一)〉、〈知的革命の端緒・一卵革命を提唱す〉の三論文を発表した。これらの論文は、それまでのような、養鶏の経営や技術の中に山岸の思想や哲学や方法論を織り込んで発表するものでなく、山岸の考える理想社会(ヤマギシズム社会)構想やその実現方法を、初めて、包括的に、具体的に、正面から発表したものである。極めて短時間のうちに綴られたものであるが、青年期に構想しその後再検討を加えてきたものが端的に提案されている。この論文が発表された背景には、山岸式養鶏会の全国への急速な拡がりがあり、社会的にも山岸の思想が受け入れられる素地ができてきたという確信があったのではないかと思われる。
これらの論文はその後、『ヤマギシズム社会の実態―世界革命実践の書』という一冊の本としてまとめられ、発表から約一年後に開催される「山岸会特別講習会」の研鑽資料として使用された。そして現在に至るまで、一三版を重ね、今もなお「ヤマギシズム特別講習研鑽会」において使用されている。
山岸はその翌年、〈二つの幸福・真の幸福と幸福感〉を発表、また、山岸会会報に替わり山岸会の機関紙としての役割を担った『農工産業新聞』に〈山岸養鶏の真髄〉を連載する。そして、一九五六年一月には「山岸会特別講習会」(以下「特講」)が初めて開催され、それまでは養鶏を通して広がった山岸会の活動も、そのもともとの趣旨である「幸福社会づくりの会」というあり方を鮮明にし、新たな段階に入っていく。
この第一回特講の冒頭に行われた山岸巳代蔵・志津子夫妻による特別講演は、幸いなことに録音されたテープが現存しており、それを活字に起こすとともに、CDにその録音を収録して別売付録とすることにした。その肉声から伝わってくるものも味わい深いものがあるのではと思う。
特講開催以降には、山岸名で発表された著作はほとんど見当たらない。一九五七年一月に創刊した『快適新聞』に掲載されたものはほとんどが講演録か口述録、あるいはペンネームを使ったり、他人名での著述となっており、例えば〈出精平使より愛妻への手紙〉は守本道夫の名で発表している。それ以外にも、本巻に収録した〈飼料のよしあしは鶏に聞く〉という文章が、当時の会員であった明田久雄名義で書かれたという記録がある。このように、山岸が他人名やペンネームを使って発表したと推測さるものが、多数ある可能性がある。例えば、第二巻関連の資料として収録した〈開拓と養鶏〉〈あんまり話がウマすぎる〉などがそれにあたるが、現段階では確認できていない。これからも調査を続けていくつもりである。
特講を受講した山岸会会員は、理想社会実現を目指して、全国各地で支部活動を展開し、近隣・同業の人々を続々と特講に送り出した。その結果、特講受講者は急速に増え、一九五六、五七年の二年間で四五〇〇名を超える。その中から、和歌山県有田郡金屋町下六川や山口県の大島で、農業経営を一つにした一体経営の動きが始まるなど、さまざまな動きが始まった。こうした運動の活発化を背景に、一九五八年三月、「山岸会式百万羽科学工業養鶏」構想が発表され、具体化されていくのであるが、それについては、第三巻を楽しみにしていただきたい。
また、今回、特講を受講したことのある哲学者の鶴見俊輔氏より、ご自身と山岸会との関わりを綴った文章を送っていただいた。鶴見氏はこれまで一貫してヤマギシズムに対する関心を持ち続けておられ、全集刊行の仕事への励ましの言葉もかけてもらった。そこで、送っていただいた文章と、これまでにヤマギシズムに関して書かれた文章をまとめ、特別寄稿として収録した。
二〇〇四年一〇月一〇日
山岸巳代蔵全集刊行委員会
第二巻目次より
◆ヤマギシズム社会の実態
ヤマギシズム社会への世界革命実践の書
解説 ヤマギシズム社会の実態(一)
まえことば
一 零位よりの理解を
二 宗教に非ず
三 自己弁明 ―人物を切り離した批判を ―
四 技術出し惜しみの批難に対して
五 同調の人々と共に
六 山岸会と山岸式養鶏会との関連
第一章 概要
一 真実の世界
二 かつてない新しい社会
三 法で縛らぬ社会
四 機構と人情社会に
五 悪平等を押し付けぬ社会
六 差別待遇のない社会
七 貧困者のない社会
八 幸福一色 快適社会
九 陽的社会・暗黒の夜から昼の世界へ
一〇 物は飽くほど豊満な世界
第二章 構 成
一 幸福研鑽会
二 専門研鑽会
三 構成員
1 幸福会員(物心幸福会員の略称)
2 十人のメンバー
四 要約
知的革命 私案(一)
一 正しきに戻す
1 世はまさに逆手なり
2 アメリカに日本の心が掴めたら
3 ああ、チャンスは彼方へ
4 わがために乞うにあらず
5 正か逆か
6 ヤマギシズム社会に
7 革命提案の弁
8 知的革命の呼称と性格
9 なぜ幸福社会が実現しなかったか
10 「具現方式」によって
11 具現方式は何にでも
12 人間の知能
13 不幸の原因
14 人情社会組織に改造
15 人種改良と体質改造を
16 百万人のエジソンを
17 女性は三〇〇人近くの直子を遺す
18 体質改造
二 先ず日本から
1 日本なる呼称
2 乏しき日本
3 日本人の反省
―国境をなくし理想社会へ通ずる近道―
4 日本を豊かに
知的革命の端緒 一卵革命を提唱す
一 前説
1 日本の鶏と農
2 働き過ぎる ―馬鹿働きを―
3 日本農民の仕事
4 卵を五円に引き下げましょう
5 私は秘密を堅持している
6 養鶏技術について
7 云いかけて云わないことと
後編発行を遅らせている理由は
8 一卵革命具現方式の要約
二 本旨 心あらば愛児に楽園を
1 源泉の涵養
2 鶏を飼う身で協力
3 学者に一卵を
4 疎遠の会員の質問に応えて、会の実情を
5 学問・頭脳を優待しましょう
6 主として種鶏家に提案
7 一卵革命の弁
8 万金積んでも買えない卵を
◆山岸会・山岸式養鶏会会報 第三号より
○ゴヂャゴヂャ云いなさんな
○農山村の今日の姿を眺めて
―一九五四年の歳の瀬に―
〈参考資料〉ことばと真理(二)
◆山岸会式養鶏の急所と成功への道順
一 まず本文を一字も余さず何回も繰り返して
意読すること
二 何ゆえに鶏を飼うのか
三 自分だけのもうけのためでない
四 山岸会式養鶏の目的
五 どんな時代でも絶対に脱落しないためには
―成功の急所と道順―
六 高度化技術を要すること
─ 永久に安定した経営である道は─
◆二つの幸福 ― 真の幸福と幸福感―
仮の幸福(幸福感)に生きる愚かしさ
感(幸福感)人種のいかに多きことよ
真の幸福はいずこに……方法あり、具現方式で
山岸会の結合とその活動
ヤマギシズム社会は、幸福研鑽会から
山岸会とは
〈書簡〉諸畑のみなさまへ
―明田正一氏宛の通信から
◆山岸養鶏の真髄
一 損をさせては申しわけないと思って言うのです
二 真理から外れて、真果は得られない
三 賞金一万円または十万円技術について
四 第一回特別講習会開催と
秘匿技術実施種鶏場参観について
五 秘匿技術実施種鶏場参観
六 求むれば得らる
──希った鶏界総親和の日はまさに──
七 鶏界を毒するもの
八 盲腸炎
九 山岸養鶏成功の最大条件(秘訣公開)
◆第一回特別講習研鑽会にて
○全人幸福のため
第一回山岸会特別講習研鑽会 〈記念講演〉から
○全人幸福 愛和の誓
○第一回特別講習研鑽を共にした、わが一体の家族、なつかしの兄姉弟妹よ、わが父・母・妻・子よ
◆農工産業新聞より
○点灯について
○飼料のよしあしは鶏に聞く
○早く話の通ずる人に
○立卵鑽より(1)
○立卵鑽より(2)
◆快適新聞より
○出精平使より愛妻への手紙(一)(二)
○無数の愛人と共に/愉快の幾千万倍の気持
○知らぬが仏(一)
○知らぬが仏(二)
◆第二巻関連の資料から
○第一回全国大会記
○長岡幸福研鑽会
○第一回特別講習会記
○腹の立つのが当然と決めていた人が 亀井正子
○ あんまり話がウマすぎる
○醍醐味の満喫─親愛の会員を訪ねて 宮下安一
○下六川一体作業実践報告 杉本利治
○開拓と養鶏 田島薫2
○山岸さんとコクシジウム 明田恵二
第二巻の編集を終えて
凡例/第一巻の正誤訂正
特別寄稿 ヤマギシ会と私 鶴見俊輔
〈付録〉山岸巳代蔵・山岸会関連地図
山岸会組織図
山岸会趣旨・会旨
山岸巳代蔵 著作・口述等 資料目録
用語・人名解説
索引